心療内科・精神科の受診に緊張する方へ
- 斎藤知之
- 6月1日
- 読了時間: 5分
更新日:6月8日

はじめて心療内科や精神科の受診する時に緊張する方は多いです。緊張する理由は人それぞれですが、よく見る緊張の理由とそれについての考え方を解説していきます。
目次
うまく話せないのでは
うまく話そうと思えば思うほど、緊張するものです。しかし、最初の診察の時、とても緊張していて言いよどむ人がほとんどです。時々、うまく話せなくて申し訳ないと言う人もいますが、うまく話せなくてもまったく問題ないですので気にしないでください。というよりも、診察の時に、うまく話せない方が良かったりします。
メンタルヘルス専門の医師(心療内科・精神科の医師)は、診察の時に、話すのがどのくらい苦手なのかも評価しながら、患者さんの話を聞いています。ですから、診察の時の話し方は、ゆっくりでも、たどたどしくても、まとまりなくても大丈夫です。医師としては、ありのままの自分で話してくださった方が助かります。
自分を否定されるのでは
最近、やたらと論破したり、あざ笑ったりする言葉を見かけます。ネットではwとか草などの言葉で、他人をあざ笑う人が多いですが、誰だってそんなこと言われたくないですよね。論破された人、笑われた人は、自分を否定されたような気分になります。特に、自分の本音、本心を否定されるのはとてもつらいことです。一度否定されると、また否定されるのではと怖くなる人も多いはずです。
心療内科や精神科は、心の相談をする場所であり、自分の本音を語る場所ですから、メンタルヘルス専門の医師は、最初から否定したり、論破することはありません。まずは、あなたの言うことを理解するためにしっかり聞いてくれるはずです。そうでなくては安心して相談できる場所とは言えません。
私の場合、どうしても否定するのは、とても攻撃的な人くらいです。むしろ私の方が恐怖を感じるので、そういう方の診察はお断りしていますが、そういう人は珍しいです。最初の診察で、医師から否定されないかと心配する人は多いですが、そんなことはまずないので、なんでも話してくれて大丈夫です。
薬が怖い
噂やSNSによるものだと思いますが、精神科の薬を怖いと思う人は多いです。たとえば、薬を飲むと性格が変わるのではと不安に思う人や、2度と薬をやめられないのではと不安になる人がいます。しかし、そんな怖い薬は、日本で公的に認められません。日本は覚醒剤のような薬を厳格に規制する国です。
日本で処方できる薬は、治験で安全性が確認されており、飲むと健康になる効果があるから公認されています。決められた用法、用量、注意点を守って薬を使えば安全ですから、心配しなくて大丈夫です。また、自分が使っている薬の説明書はネットで検索することができます。「薬の名前 添付文書」と検索すれば、薬の説明書が出てきますから、興味がある人は検索してみてください。
心療内科や精神科に受診したら、勝手に薬を始められてしまうのではないかと恐れる人もいます。しかし、医師は薬を出す時に、ちゃんと説明して患者の同意を得ます。そもそも、医師が勝手に薬を始めるなんて出来ません。もしもそのようなことがあっても、薬を飲まなければ良いだけです。インフォームド・コンセントと言いますが、医師は患者に説明して同意を得るのが当たり前です。もしも聞いても説明してくれない医師がいたら、それは問題なので別の医師に変えましょう。
医師が怖い
私もなぜか分かりませんが、病院では不機嫌そうにしている医師や無愛想な医師は珍しくありません。私もこういう医師は苦手です。しかし、メンタルヘルス専門の医師は、そのようなことはないはずです。やさしく人に接することができなければプロとは言えません。もしも、怖い医師に当たってしまったら、すぐに担当医を変えた方が良いです。緊張している人に配慮して、やさしく話を聞くのが、メンタルヘルス専門の医師の義務だからです。
病院が怖い
医師の私ですら、病院に行くのは少し怖いです。ほとんどの人が怖いのではないでしょうか。病院が怖い人は、無理もないので、せめて自分だけではなく、みんな怖いのだと思って来てください。その方が恐怖がやわらぐと思います。
受診するのは弱い人間だ
緊張とは少し違いますが、これも大事な話なのでつけ加えます。心療内科や精神科に受診するのは、弱い人間だとか情けない人だとか思う人がいます。そして、他の人から弱い人間だと思われたくないから、受診するのが嫌だという人も多いです。この考え方は根強く、特に年配の方に多いように思います。しかし、数ヶ月後の結果を見ると、これが誤解なのは明らかです。心の問題を抱えた時、すぐに心療内科や精神科に受診して治療を始めると、2-3ヶ月後にはだいぶ元気になることが多いです(統計的事実です)。一方、治療せず、何ヶ月も心の問題を抱えている人もいます。両者の数ヶ月後を見ると、早く治療して回復した人の方が強いと言えますよね。受診するのが弱い人間だと思ってしまう方は、「実は受診する方が強い」とか「早く元気になる方がかしこい」という風に、考え方を変えてみると良いと思います。
緊張してよい
緊張する理由を挙げてみましたが、自分に当てはまるものはあったでしょうか。最後に私からのアドバイスですが、緊張してはいけないと思うと、よけいに緊張が強くなるものです。緊張してもよいと思うほうが、かえって緊張は減ります。そもそも、知らないところに行く時に緊張するのは当たり前です。緊張はおかしなことではありません。はじめて心療内科や精神科に行く時は、緊張してよいと思ってください。
緊張の改善方法
診察前には深呼吸などにより緊張をほぐすことも良いと思います。普段の緊張の改善方法については「不安・緊張・恐怖の対処法」の記事でも紹介していますので、よければご覧ください。