全般性不安障害の症状
このページについて:全般性不安障害は、多岐にわたる不安、つまり、様々なことが不安になる病気です。全般性不安障害の症状を詳細に説明します。
ここでは全般性不安障害の症状について解説します。頭に「全般性」とついていることで分かるかもしれませんが、全般的に不安になる、つまり、不安の内容が多岐にわたり、色々なことを不安に思ったり心配したりする病気です。国際的な診断基準では、不安の内容が3つ以上と定義されています。しかし、この不安の程度については考えないといけません。
不安は誰にでもあります。学生であれば、試験前になると良い点数が取れるかどうか不安になるかもしれません。社会人であれば、この先ちゃんと暮らしていけるのか経済的な不安を抱えている人もいるでしょう。ある程度の年齢になると、自分の健康にも不安が出てくるはずです。しかし、基本的に我々は不安を増幅させないように対処する力があります。ストレス発散のためレジャーを楽しんだり、そこまで考えても仕方ないなどと割り切ることで、不安を解消もしくは軽減することができます。また、時間が経つと徐々に気にならなくなることもあるでしょう。いわゆる「時間が解決してくれる」というやつです。
しかし、全般性不安障害の不安は強く、明らかに過剰なレベルです。不安が強すぎていつも落ち着きませんし、眠れなくなることも多いです。あれこれと悪く考えすぎてしまい、疲れ切ってしまったり、考えすぎて仕事に集中できなくなったりします。また、人間は怖くなったり、不安になったりすると怒りっぽくなるものですが、全般性不安障害の人もイライラしていることが多いです。常に臨戦態勢になってしまい、手足にも力が入ります。これが肩こりや緊張性頭痛を引き起こすこともあるでしょう。不安が強まると、リラックスして脱力することが上手くできなくなるのです。
不安が強まると、自律神経症状というものが出現します。自律神経とは内臓をコントロールする神経で、交感神経と副交感神経に分かれます。強い不安は交感神経を活性化させ過ぎてしまい、心臓の鼓動を早めたり、呼吸の回数を増やしたりします。他には、胃腸の動きが活発になり、胃が痛くなったり、下痢したり、吐き気が出たりします。冷や汗が出たり、手足の先の血管が縮み、手足の末端が冷たくなったり痺れたりすることもあります(ちなみに自律神経に問題があるわけではなく、あくまで不安により自律神経のバランスが崩れるため起きる症状です)。こうした不安に伴う体の症状も、全般性不安障害の人によく見られます。
全般性不安障害の人を他人が見れば、「どうしてそんなに不安になるの?」と疑問に思うかもしれません。しかし、全般性不安障害の人は不安を抑えることが得意ではありません。「まあいいか」「きっと大丈夫だろう」と楽観的に考えることが苦手です。だから、不安が止まることなく、ずっと続いてしまいます。このように慢性的に強い不安が続くようになると、仕事も手につかなかったり、体調が悪くなったりして、色々と生活に支障が出てきます。そんな状態が半年以上続くようなら、全般性不安障害の診断基準を満たします。
繰り返しますが、誰だって不安になることはあります。逆に、全く不安にならない人は、ちょっと異常です。危ないことをしても不安にならない、危機感を覚えないというようでは、無謀なことばかりしてしまい、リスクが高く危ない人生を送ることになります。このように考えると、不安は生きていくのに必要な能力と考えることもできます。しかし、不安が強すぎても生活が成り立ちません。つまり、不安は強くても弱くても良くないので、バランスが大事ということですね。
参考文献:
DSM-5(米国精神医学会, 2013)