top of page

うつ病(大うつ病性障害)

更新日:2023年6月30日



うつ病の症状

うつ病は、気持ちが落ち込んだり、やる気が出なくなったりする精神疾患です。皆が同じ症状というわけではなく、症状にはかなり個人差があります。誰でも落ち込むことや、やる気が出なくなることはありますから、一時的に落ち込んでもうつ病と診断されることはありません。こうした症状が強く、何週間も持続する場合にうつ病と診断されます。気分の落ち込み以外には、ほぼ毎日、ほとんど一日中何にも興味がわかないという症状も一般的です。


典型的なうつ病では、食欲がなくなり、眠れなくなります。また、身体的な症状も出てきます。疲れやすい、倦怠感、頭痛、腹痛などが代表的な身体症状です。このため、うつ病を身体の病気と誤解する人もいます。


うつ病と同時にパニック障害の症状や、他の不安障害の症状が出ることもあります。この場合は、より重症と考えます。


うつ病では思考力が低下します。集中力が落ちて、決断が難しくなります。また、考え方はネガティブな方向に偏り、自分が無価値だと感じたり、自分が悪いと感じたりします。さらに進むと、もう死んでしまいたいとか、死ぬしかないなどと考えるようになります。思考力の障害が重症化すると、現実的な考え方ができなくなる妄想という症状も出てきます。例えば、自分が貧乏になったと思いこむ貧困妄想という症状や、自分がとても悪いことをした、罪を犯したと思いこむ罪業妄想という症状が出てきたりします。また、うつ病では、稀に幻視、幻聴などの幻覚症状が出現することもあります。


先ほどうつ病の症状では食欲が無くなったり、眠れなくなったりする症状があると書きましたが、逆に、食欲が増えて食べすぎてしまい体重が増えたり、たくさん眠ってしまったりというような症状が出る場合があります。これらを非定型症状と呼びます。うつ病の非定型症状には、この他にも、周囲の状況に過敏に反応して気分がころころと変わったり、体が鉛のように重く感じたりするなどの症状があります。


こうした非定型症状を伴う場合は、双極性障害によるうつ病の可能性があるため、注意が必要です。双極性障害とは、気分が落ち込むなどのうつ病の症状だけでなく、気分が高揚したり、楽しくなったり、自信に溢れてきたり、活動的になったりするような躁状態、躁病という症状が出る病気で、うつ病とは治療法が異なります。


うつ病の治療は薬物療法、身体療法、精神療法があります。


薬物療法

うつ病の薬を抗うつ薬と呼びます。抗うつ薬には何種類かありますが、どの抗うつ薬も使い方は共通しています。開始する時は、数週間かけて段階的に量を増やします。また、中止する時は逆で段階的に数週間かけて減らしていきます。これを守らないと、気持ち悪くなったり、めまいがしたりという副作用が強く出てしまいます。


どの抗うつ薬も、数週間してから効果が出るという特徴があります。このため、初めの数週間は効果を実感しにくいのですが、それでも使い続ける必要があります。この即効性のなさが関係するのでしょうが、抗うつ薬に精神的に依存することはまずないです。習慣性や依存性は心配しなくても大丈夫です。


SSRIやSNRIという種類の抗うつ薬は副作用が少ないため優先的に使われます。ただ、初期には眠気や吐き気が出ることはあります。あとは、ミルタザピンという抗うつ薬は眠気が強いものの、睡眠を改善する作用があるため、よく使われます。副作用の強い抗うつ薬としては、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬などがあり、眠気やふらつき、便秘や尿が出にくくなるなど色々な副作用があり、不整脈のリスクが上がることもあります。


一種類の抗うつ薬だけで改善しない場合は、ほかの薬を組み合わせることがあり、これを増強療法と言います。増強療法については下記のページで解説します。



また、生薬系では、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)というハーブや、加味逍遙散という漢方薬などがうつ病を治療する効果があることが分かっています。ただし、セントジョーンズワートは抗うつ薬と一緒に使うと副作用のリスクが高まるため、一緒に使わないように注意してください。


薬による維持療法

うつ病は一度良くなっても再発しやすい病気です。半年から1年間ほどは再発に気をつけなくてはなりません。この間に抗うつ薬をやめてしまうと、再発のリスクが高いです。そのため、抗うつ薬で改善した後も、半年から1年間は同じ量の抗うつ薬を続ける方法が一般的です。抗うつ薬には再発を防ぐ効果もあるのです。このように、抗うつ薬により再発を防ぐ治療を、維持療法と呼びます。維持療法を終える時は、抗うつ薬を数週間かけて徐々に減らします。なお、過去にうつ病を再発した方は、維持療法の期間を長くすることがあります。


身体療法

うつ病の薬は色々とありますが、なかなか薬の効果が出ない人もいます。また、抗うつ薬は効果が出るまで時間がかかり、即効性が無いのが欠点です。どうしても薬が効かない人や、すぐにうつ病を良くしないといけない人、例えば、うつ病のため自殺への思いが強くなりすぎた人などには、身体療法と呼ばれる機械的な治療もあります。


最近注目を集めている身体療法は、経頭蓋磁気刺激(TMS)です。繰り返すので反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)とも呼びます。これは、脳に磁気刺激を与えてうつ病を治療するもので、外来通院で行うことができます。


古典的な身体療法は、電気けいれん療法です。これは、脳に電気を流し、てんかんという現象を引き起こすことでうつ病を治療します。痛みや苦痛を感じないように全身麻酔で行います。電気けいれん療法の治療効果は高く、即効性があるのが特徴です。ただ、全身麻酔で行うため入院する必要があり、大掛かりな治療と言えます。


この他にも光を当ててうつ病を治療する光線療法という手法もあり、いくつかの医療施設で使われています。


精神療法

うつ病の精神療法には、心理教育、認知行動療法、対人関係療法など様々な方法論があります。心理教育とは、簡単に言えば病気の解説、説明です。うつ病について丁寧に説明することが、治療の第一歩なのです。認知行動療法は、自分の考え方の偏りに気づくための精神療法です。私たち人間というものは、どうしても偏見や誤解を抱いてしまうものです。偏見、誤解は瞬間的に頭に浮かびます。例えば、笑っている人を見ると、自分がバカにされているのではないかというネガティブな発想が浮かぶことがあります。実際には、笑っている人は全く関係ない話を楽しんでいるだけなのかもしれません。しかし、とっさに自分について話していると勘違いしてしまうわけです。このように、自分の頭の中にとっさに浮かんだ発想、偏った考えを振り返り、気付き、修正していくと方法が認知行動療法です。また、対人関係療法では、治療者と患者が一緒に、現在の人間関係のあり方、他者との接し方を振り返り、考え直せる部分がないか検証していきます。例えば、自分が相手に期待しすぎていないかと反省したり、相手から誤解されるような態度を取っていないか見直したりします。


参考文献:日本うつ病学会治療ガイドライン

Comentários


他のブログ記事
bottom of page