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抗精神病薬の有効性を遺伝子で予測する

更新日:2023年3月27日

このぺーじについて:抗精神病薬が統合失調症の治療に有効かどうかを遺伝子で予測するという研究論文を紹介します。


今回は統合失調症の遺伝子研究についてご紹介します。統合失調症とは幻覚や妄想、意欲低下や認知機能障害などの症状が出る精神疾患です。

統合失調症は脳のドパミンの分泌異常が原因の一つとして考えられています。そして、治療は脳のドパミン受容体というものをブロックする抗精神病薬を使います。

ただ、残念なことに抗精神病薬の効果は人それぞれです。よく効く人もいれば、効果がいまいちな人もいます。あらかじめ有効性を予測できれば良いのですが、現在のところ使ってみないと効果は分かりません。これをなんとか出来ないかと、事前に薬の有効性を予想する研究が世界各地で行われています。

今回は、統合失調症に関係する遺伝子を調べることで、抗精神病薬の有効性を予測するという研究を紹介します(引用文献は最後に記載)。この研究では統合失調症の遺伝子を調べて、その結果を元に、polygenic risk scores (PRS)という値を算出しています。PRSは直訳すると「複数の遺伝子による危険性の値」という感じです。

人間の遺伝子は無数にあります。そして、病気に関係する遺伝子も数多く存在します。たった1つの遺伝子だけで病気になることは珍しく、大抵は多くの遺伝子が組み合わさり、病気が作られるのです。

統合失調症もたくさんの遺伝子が組み合わさり、病気のリスクが高まると考えられています。このため、1つの遺伝子だけで統合失調症になるかどうかを予測するのは困難です。それなら、統合失調症に関係する全ての遺伝子を総合的に計算すればよい。その発想で計算された値がPRSです。統計学的な手法を用いて、複数の遺伝子を全てひっくるめて計算し、病気のリスクを算出するのです。

PRSは病気の発症を予測する値です。しかし、今回の研究ではPRSが治療の有効性も予測するかどうかを調べました。今回は統合失調症を発症した510人でPRSと、12週間の抗精神病薬による治療効果が調査されました。

その結果、PRSが高い方が症状が治りにくいことが分かりました。つまり、PRSが高いと、抗精神病薬で治療しても、統合失調症の症状がなかなか治りきらないということです。

この結果から、統合失調症では遺伝的なリスクが高い方が、治療の予後も悪いという可能性が見えてきます。こうした研究がさらに進めば、どの薬を使うと良いか、薬を投与する前に分かる可能性も見えてきます。今後は、遺伝子により治療法を選択する時代が来るかもしれませんね。

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