子どもの脳の発達とうつ病
- 斎藤知之
- 2 日前
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脳の成長・発達をMRIで調べることにより、精神疾患のなりやすさ(脆弱性)を調べる研究があります。子供から大人になるにつれて脳の構造は変化しますが、その変化により、将来的に精神疾患になるかどうかを予測します。これはまだ研究段階ですから、一般的な病院で実施されることはありませんが、興味深い研究だと思います。
子供の頃から精神的に不安定だった方が、自分は発達障害ではないかと思って受診されるケースがあります。しかし、本来、発達障害とは能力上の問題であり、精神的な不安定さとは別です。このような誤解は、発達障害の精神的な過敏さが過剰に報道されたり、SNSで広まったりしているためだと思います。
ただし、成長・発達の問題は、なにも発達障害だけではありません。精神的な発達の問題もあります。最近の研究によれば、子供の頃から脳の発達に問題があった場合、将来的に精神的な不安定さが出るかもしれないのです。これは今の医学的な定義では発達障害とは言いませんが、発達障害的なものではあります。今回は子供の脳の発達についての研究の一つを紹介します。
この研究には161名のお子さんが参加され、思春期前期(12歳)、中期(16歳)、後期(19歳)に脳画像検査を受け、脳の構造が評価されました。そして、うつ病について、12~27歳まで定期的に評価されました。この間、46名(うち女性28名)がうつ病になりました。
この調査の結果、脳の一部の構造の変化がうつ病と関連しているという結果を認めました。成長とともに起きる扁桃体の容積が増加や、海馬傍回、紡錘状回、島皮質、後頭葉の構造の変化(肥厚の増大または菲薄化の緩和)が、うつ病発症と統計的に有意に関連していたそうです。
この結果から、脳の成長・発達の様子が、うつ病のなりやすさと関係している可能性が分かります。つまり、子供の脳の発達具合により、精神疾患へのなりやすさが決まるかもしれないのです。あとは、どのように成長を決定できるかが気になるところですが、そこまでは調べられていません。今後の研究に期待したいところです。
なお、脳の構造は複雑であり、細かく解析しないと分からないことも、この研究から分かると思います。脳は複雑で、個人差があり、ひとりひとり違います。つまり、端的に発達障害などと区分して理解できるようなものではないのです。私としては、成長や発達の違いを、あまり発達障害だとかレッテル貼りせず、人間の個人差や多様性として捉えられると良いと思います。