ベンゾジアゼピンに依存する確率
このページについて:ベンゾジアゼピンを使うと、どのくらいの確率で依存症になるのか、有病率を調べた疫学調査結果を紹介します。
ベンゾジアゼピンという種類の薬にはいくつもありますが、抗不安薬や睡眠薬として世界中で使用されています。このベンゾジアゼピンには依存性があり、中にはベンゾジアゼピンを乱用する人もいます。日本では医師がベンゾジアゼピンを安易に処方するため乱用する人が多いと話題になっており、国の規制も少しずつ強まっています。
ベンゾジアゼピンの乱用や依存性の問題は日本だけではなく、他国にもあります。アメリカでベンゾジアゼピンの問題を調べた疫学調査がありましたので、ご紹介します。
アルコールや覚せい剤の依存症はよく知られていますが、実は、ベンゾジアゼピン依存症に陥る人もいます。依存症は、最近では物質使用障害とも呼ばれますが、典型的にはその物質が有害なことが分かっていてもやめられず、大量に繰り返し使用してしまうような状態を指します。物質使用障害を作るような「物質」には、アルコール、覚せい剤、大麻、タバコ、カフェインなど色々あり、ベンゾジアゼピンも含まれます。
ベンゾジアゼピンの依存症はベンゾジアゼピン使用障害とも呼ばれます。これは、ベンゾジアゼピンの不適切な摂取によって普通の社会的な生活が送れなくなってしまう状態、生活が障害された状態です。
今回紹介するアメリカの疫学調査では、ベンゾジアゼピンの乱用や、ベンゾジアゼピン使用障害がどのくらいの割合で存在するのかを調べています。2015年から2016年にかけて18歳以上の102,000人が調べられました。その結果、全体の12.5%にあたる人がベンゾジアゼピンを使っており、少なくとも1回以上ベンゾジアゼピンを不適切に使用した人の割合は2.1%でした。ベンゾジアゼピン使用障害と診断された人は全体の0.2%です。ベンゾジアゼピンを使用している人を分母にすると、ベンゾジアゼピン使用障害の割合は1.5%でした。ベンゾジアゼピンを使うと1.5%の確率で依存症になるリスクがあるわけです。
この数字への印象は人それぞれでしょう。私はベンゾジアゼピン使用障害の割合は「意外に少ないんだな」と思いましたが、逆に、「結構多いな」と思う人もいるかもしれません。
ベンゾジアゼピンには即効性があり、すぐに不安を和らげたり、睡眠を促すという優れた作用があります。しかし、副作用も同時にあります。依存性だけでなく、集中力が低下したり、忘れっぽくなるなどの認知機能障害もあります。このため、車の運転前の服用は避けないといけません。高齢者だとふらつきや転倒が問題になることもあります。
絶対に安全な薬などなく、どの薬にも効果と同時に副作用があります。よく理解した上で使うことが大事ですね。