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双極性障害の治療

更新日:2023年3月27日

このページについて:双極性障害(躁うつ病)の治療について詳しく説明します。うつ病の治療とは違うため注意が必要です。


双極性障害の治療は薬物療法が中心ですが、症状、病相に合わせて内容を変えます。双極性障害は気分が激しく変動する病気であり、ほとんど症状が目立たない時や躁状態といって活動的で興奮しやすい時、うつ状態といって気分が落ち込み活動性が低下した時など、色々と症状が変わります。それぞれの症状の時期に合わせた薬物療法を行なっていきます。

維持療法について:まずは症状が特に目立たない時に使う薬から説明します。双極性障害は、症状が安定している時もありますが、しばらくすると、気分が変動し、躁状態やうつ状態などの症状が出てきます。これを防ぎ、症状が目立たない状態を維持させる、つまり躁状態やうつ状態の出現を予防する治療のことを維持療法と言います。

維持療法として最も推奨されている薬は炭酸リチウムです。炭酸リチウムは即効性がないため治療を急ぐ時には物足りないですが、今後の症状を予防する効果はしっかりしています。しかし、副作用の関係で使えない人もいます。また、胎児に悪影響があるため妊娠中の女性には使えません。このため、他の選択肢も必要になります。2番目に推奨される薬としては、ラモトリギンやバルプロ酸などの抗てんかん薬(てんかんという病気も治療できる薬)、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピンなどの非定型抗精神病薬(幻覚や妄想などの精神病症状を抑える効果もある薬)などがあります。これらの薬は単独ではなく、複数を組み合わせて使うこともあります。

躁状態の治療:躁状態は自信過剰になったり、活動的になったり、興奮したりする状態です。躁状態が強い時は、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピンなどの非定型抗精神病薬が有効です。こうした薬を炭酸リチウムなどの他の治療薬と一緒に使うこともあります。また、バルプロ酸、カルバマゼピンなどの抗てんかん薬も有効です。

うつ状態の治療:うつ状態では非定型抗精神病薬が最も推奨されます。非定型抗精神病薬は即効性があるのが長所です。抗てんかん薬ではラモトリギンという薬が有効ですが、使い始めは皮疹などの副作用を防ぐためにゆっくりと数ヶ月かけて増やしていく必要があります。このため、すぐに効果を期待することができません。

双極性障害のうつ状態の時に抗うつ薬だけを使うと、躁状態になったり、落ち着かなくなったりと、病状が悪化する可能性があります。このため、基本的に抗うつ薬は用いませんし、使う場合も双極性障害の治療薬と一緒に使います。

混合状態の治療:混合状態は、うつ状態と躁状態が混ざり合うような状態です。うつ病との境目が分かりづらい状態でもあります。混合状態にどの薬が有効なのか調べた調査報告はまだ少なく、あまりデータがないのが現状です。世界生物学的精神医学会のガイドラインを見ると、オランザピンという非定型抗精神病薬が有効だというデータはあるようですので、他の非定型抗精神病薬もおそらく有効でしょう。

混合状態はうつ病と誤解されやすいのですが、混合状態の時に抗うつ薬を使うと病状が悪化します。時々あるケースとしては、うつ病に間違われて抗うつ薬を使い情緒不安定になるというものです。薬を正確に使うためにも、正しく診断しないといけません。

薬物療法以外:実は、薬物療法以外でも有効性が高く、さらに即効性がある治療として、修正型電気けいれん療法というものがあります。これは、頭に電流を流すことで、人工的にてんかん発作という現象を作り出す治療であり、うつ状態や躁状態を速やかに改善させる効果があります。ただ、入院しないとできません。修正型電気けいれん療法を行う際は麻酔や筋弛緩剤を投与して、苦痛を感じないように配慮します。急に血圧や脈拍が変動するため、心臓が悪い方や血管系の病気がある方はリスクが高くなります。こうしたコストやリスクがあるために、修正型電気けいれん療法は薬物療法の効果がない方や、緊急性の高い人だけに行います。

精神療法としては、うつ病と同じく認知行動療法が有効とされています。これは自分の認知、つまり物事の捉え方や考え方を見直したり、行動を変えたりする治療法です。誰しも多少は偏った考え方をしていますので、自分の考え方を見直すのは大事です。

また、生活リズムが乱れると双極性障害の病状が悪くなるので、生活リズムを乱さないように工夫したり、寝る時間や起きる時間を記録して、生活リズムを自分で確認することも大事になります。

双極性障害はストレスにより悪化しますので、ストレスの少ない生活を心がけることも大事になります。ただ、人生は色々と問題やトラブルが起きるものですから、全くストレスのない生活は難しいでしょうし、ストレスの原因となる問題を一人で解決できないことも多いでしょう。この場合は、誰かの助けを借りることも大事です。また、金銭面や労働関係などであれば、行政サービスのサポートを受けることもできるかもしれません。自分の周りにどれだけの援助があるのか、確認してみましょう。

参考文献:

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