適切な睡眠習慣

不眠症の治療には薬を使う前に睡眠習慣の改善が必要と言われています。もちろん睡眠薬も有用ですが、まずは、適切な睡眠習慣を身に付けることが大事なのです。以下に説明します。
生活リズムを一定に保つ:なるべく同じ時間に起きるよう心がけましょう。なかなか寝る時間は同じにできなくても、起床時間は毎日同じにしてください。たとえ休みの日でも大きく変えない方が良いです。人間には体内時計(概日リズム)というものがあり、だいたいの時間感覚がそなわっています。起きる時間が変わると、体内時計が狂ってしまいます。これは、外国に出かけた時に体験する時差ボケと同じです。体内時計が狂うと、眠る時間になっても眠くならなかったり、眠ってはいけない時間に眠たくなったりしてしまいます。生活リズムを毎日のようにころころと変えることは、たとえて言うなら毎日あちこちの国に旅行するようなものです。これでは、毎日のように時差ボケが起きてしまい、うまく眠ることができません。それを避けるために、休日でも普段と同じ時間に起きて、体内時計をなるべく一定に保つように心がけてください。
寝る時間を確保する:当然ですが、寝る時間が足りなければ十分に眠ることができません。だいたい平均的な睡眠時間は7-8時間程度です。少なくとも起きる時間から計算して7時間前には床に就くようにしましょう。ただ、あまり数字に固執すると、かえって眠れなくなるので注意しましょう。神経質になりすぎるのや、よくありません。
眠くなければ無理に寝ない:全然眠くないのに寝ようとしても、眠れるはずがありません。それなのに無理に寝ようとすると、焦ったり苛立ったりと感情が乱されて余計に眠れないという悪循環に陥ることがあります。眠れないことを気にしても、良いことはありません。眠くない時は無理に寝ようとせずに、リラックスできることをしたり、気を紛らわせたりしてみてください。眠ろうとして焦るのではなく、気持ちを落ち着かせることが大事です。
20分たっても眠れないなら布団から出る:これも上記の「眠くなければ無理に寝ない」に通ずる考え方です。布団の中でいくら頑張って眠ろうとしても、なかなか眠くならないものです。それなのに更に頑張って眠ろうとするなんてナンセンスです。そんなことをしても、眠れずにイライラするだけです。20分以上たっても眠れない場合は、あきらめて布団から出ましょう。そして、なにか気を紛らわせるような、リラックスできるようなことをするのです。焦っては余計に眠れません。急がば回れ、という考え方が大事です。
眠る前はリラックスする習慣をつける:普段から眠る前はリラックスする習慣をつけておきましょう。眠れない時だけ何かするというよりも、毎日のように行うルーチンが大事です。例えば、クラッシック音楽のような静かでゆったりとした音楽を聴くのも良いですし、あたたかいミルクを飲んで気持ちを落ち着かせるのも良いです。これは個人の好みですから、自分に合ったリラクゼーション法を探してみてください。
ベッドや布団は眠ることだけに使う:布団に入るときは眠るとき。そんな習慣をつけておくのも睡眠にとっては効果的です。もちろん、他にベッドや布団を使うこともあるでしょうが、少なくともベッドの上で仕事をしたり、ゲームをするなどの目がさえるような行動は控えた方がいいでしょう。
寝室の環境を整える:やはり寝る場所の環境も気になりますよね。静かな環境でなければ眠りにくいですし、くつろぐこともできません。また熱帯夜で眠れない経験をもつ人も多いと思いますが、暑すぎる環境では眠ることが難しいです。静かで、少し涼しいくらいの心地よい寝室を作りましょう。
夕方以降は明るくしない:明るい光に当たると体が朝だと勘違いしてしまいます。午前中に日光浴をすると体内時計がリセットされて夜眠りやすくなったりしますが、逆に、暗くなってからは明るい光は避けた方が良いです。
寝る30分前は電子機器を使わない:スマホやパソコンの画面を見ていると目がさえてしまうことがあります。寝る前のスマホ、パソコンは控えましょう。
寝る前は飲食を制限する:寝る前にたくさん食べてしまうのは、よくありません。横になると胃が張って苦しくなりますし、胃の中身が食道まで逆流してきて胸やけしてしまうこともあります。これを逆流性食道炎と言います。どうしても寝る前にお腹がすいたら、軽いものを少しだけ食べるだけにとどめましょう。また、寝る前に水分を多くとると、夜中にトイレで起きてしまうことがあります。寝る前に水分をとるときは少なめにしましょう。
日々の運動と健康的な食事:健康は日々の積み重ねです。特に有酸素運動などは体の健康を保つだけでなく、心の健康も保ちます。また、食生活の乱れも体の健康に悪影響を与えるだけでなく、心の健康にもマイナスです。日々、軽い運動や、健康的な食事を心がけましょう。睡眠に良い効果があります。ただし、寝る前の激しい運動は目がさえてしまうのでお勧めしません。
夕方以降のカフェイン禁止:健康ドリンクにもカフェインを含むものが多いですが、コーヒー、ココア、チョコレートなどカフェインを含むものはたくさんあります。カフェインは目をさます効果があるので午後にとると眠れなくなってしまいます。また、カフェインの大量摂取は体に悪く、量によっては中毒症状を起こしますので注意して下さい。
寝酒を控える:アルコールをたくさん飲むと睡眠が浅くなったり、短くなったりします。たくさんお酒を飲んだ翌日に、朝早く目覚めた経験をおもちの方もいると思います。寝るためにお酒を飲む、寝酒の習慣がある人もいますが、かえって睡眠の質を低下させてしまうのです。寝る前のアルコールは控えた方が良いです。
いかがでしょうか。ここに挙げた習慣は、すぐにでも実行できる簡単なものばかりです。良質な睡眠のために、ぜひ試してみてください。
こうした方法でも不眠が改善しない場合は、薬物療法を考えます。また、不眠症の背景にうつ病や不安障害などの精神疾患がある場合は、そちらの治療が優先されます。