双極性障害(躁うつ病)と高血圧
更新日:2023年3月27日
ここでは双極性障害(躁うつ病)と高血圧の関係を解説します。
日本人のおよそ3人に1人が高血圧と言われるほど、高血圧は多い病気です。一般的に上の血圧(収縮期血圧)が140以上、下の血圧(拡張期血圧)が90以上を高血圧と言います。高血圧というだけですぐに治療を必要とするような緊急事態になることは稀です(稀ですが無いわけではありません)。しかし、高血圧を放置しても良いわけではありません。
高血圧が続くと将来的に心臓の病気や血管の病気になるリスクが高まります。こうした病気は生命の危機に直結するので、寿命にも関係してきます。心血管系の気を予防するために、高血圧の治療が必須なのです。
実は、精神疾患と高血圧の関係は深いです。例えば興奮すると血圧が上がるように、精神状態が不安定だと血圧は上がるので、これは分かりやすい話だと思います。
今回は、双極性障害(躁うつ病)という精神疾患と高血圧の関係を紹介します。引用するのは2018年の論文で、システマティック・レビューという複数の論文を集めて評価したものです。システマティック・レビューは1つの論文から判断するわけではないので、視野の広い評価になり信頼性が高くなります。このシステマティック・レビューでは、双極性障害と統合失調症で高血圧が多いかどうかを調べた論文が5本、双極性障害と統合失調症の患者さんで高血圧の治療をちゃんと受けているか調べた論文が5本集められ、総合的に評価されました。
双極性障害とは躁うつ病とも言いますが、気分が高まったり落ち込んだりする病気です。統合失調症は幻聴や妄想が出現する精神疾患です。双極性障害と統合失調症では心血管系の病気になりやすいことが知られているので、この2つの病気が注目されたようです。
さて、論文を集計した結果ですが、双極性障害の患者さんは高血圧になりやすいことが分かりました。統計的にリスクが高いことが確認されたそうです。一方で、統合失調症の患者さんでは高血圧が多いわけではなかったそうです。統合失調症の治療には抗精神病薬(非定型抗精神病薬)という薬を使いますが、抗精神病薬の中には血圧を下げる作用を持つものが多いです。これは想像ですが、もしかすると、抗精神病薬のおかげで高血圧になりにくいのかもしれないですね。
ただし、双極性障害の患者さんも統合失調症の患者さんも、高血圧の治療をしっかりと受けていない人が多いという結果も出たそうです。高血圧は治療すれば改善する病気ですが、この治療がうまくいっていないようですね。これは医療体制の問題もあるかもしれません。双極性障害や統合失調症を治療しつつ、高血圧も治療できるような医療体制が望まれます。しかし、精神科(心療内科)と内科が連携するような医療体制は少ないです。これは、今後の課題かもしれません。
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