せん妄と言葉
今回はせん妄と言葉についての研究論文をご紹介します。
せん妄とは、一時的に混乱して認知症のような症状が出たり、幻覚や妄想などの多様な精神症状が出たりする現象のことです。
多くは肝臓や腎臓などの内臓の病気だったり、肺炎などの感染症だったりなど、身体の病気が原因です。特に入院するような体の病気があると、せん妄が起きやすいです。その他、薬やアルコールが原因になることもあります。
せん妄は認知症との区別が難しいことがありますが、認知症は段階的に、または徐々に進行するのに対して、せん妄は急激に発生します。例えば、今まで特に問題なかったのに、入院したら急激に理解力が衰え、異常な行動をとるなどが典型的なせん妄です。急に認知症のような症状が出たら、認知症ではなくて、せん妄の方が疑わしいのです。
せん妄になると脳が正常に機能しなくなるのですが、そのために言葉をうまく扱えなくなることもあります。しかし、せん妄と言語能力の関係について調べた研究は少ないそう。今回ご紹介する研究は、せん妄と言語能力の関係を調べています。
この研究に参加した人は65歳から97歳の方々で、全部で45人です。全員が入院している患者さんとのことです。
内訳としては、せん妄を起こしている人、認知症でせん妄は無い人、特に脳の機能に問題ない人で、各15人ずつになります。
この方々で、言語能力のテストを行いました。
その結果、認知症の人も、せん妄を起こしている人も、脳の機能に問題ない人と比べれば、言語能力が低下していたとのことです。
特に、言葉の流暢性については、せん妄を起こしている人の方が認知症の人よりも悪かったという結果でした。言葉の流暢性とは、すらすらと言葉が出す能力になります。言葉の流暢性が低い人は、たどたどしく話したり、「あれだ、ええと、」みたいに言葉につまることが多くなります。
確かに、せん妄を起こしている人は、上手く会話できていないというか、会話に間が多く、たどたどしく話している印象が私の中にもあります。これは、多くの認知症と違う点かもしれません。
例えば、アルツハイマー型認知症の方なんかは、初期には会話に問題がなく、普通に話すことができます。そのため、会話しているだけでは認知症だと分からないことがあります。
もしも、せん妄で会話が流暢にできなくなるのであれば、会話の中で気づくことができるかもしれません。
せん妄を見逃さないためにも、医療者と患者さんがコミュニケーションを取ると良いのかもしれないですね。