リチウムは42歳以上の双極性障害の自殺を防ぐ?
双極性障害(双極性感情障害)とは、うつ状態を繰り返し、その間で活発になる躁状態も起こる精神疾患です。双極性障害は生涯にわたり長く続きます。
どんな精神疾患でも言えることではありますが、残念ながら自殺される方は一定数います。双極性障害をもつ方の中でも、やはり自殺率は上がってしまいます。
したがって、自殺を予防することが大事になります。自殺の予防効果がある薬に、リチウム(炭酸リチウム)があります。リチウムの自殺予防効果は、すでに様々な研究のデータで示されています。
しかし、リチウムの自殺予防効果は人によって差はないのでしょうか? そういう疑問を持つ方もいると思います。今回ご紹介する研究論文は、年齢によって、リチウムの自殺予防効果が異なるのではないか調べたものです。
これは2000年から2007年に行われた、リチウムとバルプロ酸の無作為化対照試験のデータを調べたものです。リチウムもバルプロ酸も双極性障害の治療薬です。
ここでは一人の患者さんを2.5年間かけて調べるので、時間をかけた研究になります。これに参加した患者さんは、双極性障害と診断されており、自殺企図したことがある方です。
データを統計学的に解析したところ、42歳以上の患者さんでは、バルプロ酸よりもリチウムを使う患者さんの方が、自殺企図が減るという結果が出ました。
ちなみに、リチウムもバルプロ酸も薬の血中濃度を測定して有効性を確かめる薬ですが、自殺企図の予防効果については薬の血中濃度は関係しなかったそうです。
つまり、年齢が高いと、リチウムの自殺予防効果は高まるということです。逆に、20代や30代の若い方では、リチウムの自殺予防効果は薄いのかもしれません。
ここからは私の想像ですが、年齢が高い人は、ストレスだけでなく、老化などの生物学的要因も関連して精神状態が悪化しているケースが多いように思います。リチウムの投薬は、まさに脳にリチウムイオンを与えるという生物学的な治療ですから、生物学的な要因が強いと、生物学的治療の必要性が高まるのかなとも思いました。まあ、一般化しすぎかもしれませんが。
とにかく、自殺予防は精神医療にとって重要なテーマです。リチウムに自殺予防効果があるということは重要なことだと思っています。
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