プラゾシンによるアルコール依存症の治療
更新日:2023年3月27日
このページについて:プラゾシンという薬が、アルコール依存症の治療に有効かもしれないという研究結果をご紹介します。
世の中には様々な依存症がありますが、アルコール依存症はその代表格でしょう。お酒のトラブルは身近にありますが、トラブルが続いてもお酒をやめられなかったり、健康を害してもお酒をやめられなかったりする人は、世界中に沢山います。
最近は、アルコール依存症の治療薬も増えてきましたが、まだまだ他の精神疾患に比べて治療薬が少ないです。
今回は、アルコール依存症の治療薬の研究をご紹介します。
研究の対象となる薬はプラゾシンというものです。プラゾシンは日本でも血圧を下げる薬、前立腺肥大症の排尿障害を治療する薬として用いられています。
ちょっと難しい話ですが、プラゾシンはアドレナリン受容体の一種であるα1受容体をブロックする薬です。アドレナリン受容体はアドレナリンやノルアドレナリンといった興奮性物質を受け取る場所です。
アルコール依存症ではノルアドレナリン系の神経回路が関わっているのではないかという仮説があるそうです。それならば、ノルアドレナリンに関係するプラゾシンという薬も有効かもしれません。
薬の有効性を実際に調べるには、人間に投与してみるしかありません。人に投与する実験を、臨床研究と言います。治験という言い方もありますね。
一番しっかりと薬の効果を確認する方法は、ランダム化比較試験といって、研究に参加する人の中から薬を投与する、投与しないをランダムで決めて効果を比較する方法です。さらに、薬を投与しない人たちにも、薬が投与されていないことを気付かせないため偽薬(プラセボ)という薬の形状をした偽物の薬を渡します。このため、飲んでいる人たちは本物の薬を使っているのか、偽物のプラセボを使っているのか分かりません。
人間は意識してしまうと判断を誤ることがあります。本物の薬だと思うと効果が無いのに効いている気がしたり、偽物だと思うと効かない気がしたりします。そんな意識によるバイアスを防ぐために、上記の様な複雑な方法をとるわけですね。
さて、この研究には92人のアルコール依存症の人たちが参加しました。プラゾシンは朝4mg、昼4mg、寝る前8mgという用量で使用されました。研究の期間は12週間です。
92人中、実際に研究を完遂できたのは80人でした。その結果、プラゾシンにより大量に飲酒することが減るなどの効果が確認できたということです。主な副作用は、眠気とむくみだったようですね。
アルコール依存症はまだまだ治療が難しい病気です。薬は少しずつ出てきていますが、そんなに種類もありません。新しい治療の選択肢が生まれるのは歓迎すべきことです。
プラゾシンによる治療も、今後、認められる日が来るかもしれません。
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