プラセボの効果を予測する
更新日:2023年3月27日
統合失調症の薬のプラセボ効果に関する研究を紹介します。
薬を使うと化学的な作用により治療効果が出ます。ただし、薬には化学的な作用以外にも効果が出るメカニズムがあります。それがプラセボ効果です。
薬の形をしているけれども何の化学物質も入っていない、プラセボと呼ばれる薬(偽薬とも言いますが、ダミーの薬です)を飲むと、それだけで効果が表れることがあります。例えば、痛み止めと言われてプラセボを医師から渡され、それを飲むと痛みが軽くなるという現象が起きます。これが、プラセボ効果です。心理的な効果に近いですね。
このプラセボ効果も薬の大切な効果の一つです。特に、精神症状はプラセボ効果で改善することが珍しくありません。今回は統合失調症の薬のプラセボ効果に関する研究を紹介します。
この研究は持効性注射剤というタイプの薬についての研究です。持効性注射剤とは、一度注射すると数週間以上効果が持続するというものです。
統合失調症の患者さんをグループ分けして、一方はパリペリドンという薬の持効性注射剤、もう一方はプラセボ(ダミー)の注射薬を使います。こうして2つの効果を比較するのが通常の研究です。
ただし、今回はプラセボの効果だけに注目しています。
その結果、初めの1週間の効果と9週間目の効果が相関していることが分かりました。つまり、プラセボを使ってすぐに効果が出た人は、その後もプラセボ効果が続くということです。
もしかすると、プラセボが効きやすい体質や性格なんかもあるのかもしれないですね。そして、初めの1週間でプラセボの効果を確かめることもできそうなのです。
それならば、とりあえずプラセボを使ってみて、効果が出たらプラセボが効きやすい体質と考え、その後もプラセボを使い続ける、というのも一つの治療手段なのかもしれません。
ただし、実際の薬を使わずプラセボを使うというのが倫理的に良いのか悪いのかも、悩ましいところですね。まあ、簡単に言えば偽物の薬ですから。
プラセボは薬じゃないので無害なものです。もちろん注射は針を刺すので、そこは侵襲性がありますが。それでも、実際の薬を使うよりは安全です。安全性が高いなら、それで良いのではという意見もあると思います。この辺は、今後も議論があるかもしれません。
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