top of page

ボルチオキセチンは頭の良くなる抗うつ薬

  • 斎藤知之
  • 2 時間前
  • 読了時間: 4分
ボルチオキセチンは頭の良くなる薬

ボルチオキセチン(商品名トリンテリックス)とは抗うつ薬(うつ病の治療薬)です。ボルチオキセチンには、感情を改善させる効果だけでなく、認知機能を改善させる効果もあります。認知機能とは知能や知的能力とほぼ同じ意味で、記憶や情報処理能力、集中力などの脳のパフォーマンスを指します。つまり、ボルチオキセチンは頭の良くなる薬と捉えることもできます。


以前も当ブログ内でボルチオキセチンが認知機能を改善する効果があることはお伝えしました。以下、同記事のリンクです。


もっとも、普通の状態でボルチオキセチンを飲んでも頭が良くなることはありませんうつ病の場合だけです。


うつ病になると気持ちがネガティブになることは有名ですが、脳のパフォーマンスが下がることを知らない人は多いかもしれません。うつ病になると集中力や思考能力が低下して、仕事のミスが増えたり、仕事が遅くなったり、文字を読んでも頭の中に入っていかなくなったりします。つまり、うつ病は認知機能や知能を低下させる病気なのです。そして、ボルチオキセチンは、うつ病による認知機能障害・知能低下を改善してくれます。


認知機能とは色々な知的能力の領域をまとめた呼び方ですが、ボルチオキセチンは認知機能の中でも複数の領域に効果をもたらすようです。ある研究では、うつ病の方がボルチオキセチンを8週間内服したところ、遂行機能(計画を組み立てる力)、集中力、処理速度、記憶などの認知機能が改善したと報告されています。



ボルチオキセチンの効果は脳画像検査でも裏付けされています。8週間のボルチオキセチンの使用で、知能・認知機能のテスト結果だけでなく、脳画像検査でも効果が確認できたという研究結果もあります。



こうしたボルチオキセチンの効果は、集中力や、素早く仕事をすることが求められる人には重要でしょう。頭脳労働者や忙しい労働者がうつ病になった場合、ボルチオキセチンの使用を積極的に考えても良いと思います。


また、すでに認知機能が低下してしまった方は、これ以上認知機能を低下させたくないはずです。高齢になると徐々に認知機能は低下しますし、ある程度深刻化すれば認知症と呼ばれるようになります。認知症の方や認知症になりかけている方が抗うつ薬を使用する場合にも、ボルチオキセチンが向いているかもしれません。


ボルチオキセチンは、アルツハイマー型認知症の方に長期間使用しても安全だというエビデンスがあります。ある調査によれば、アルツハイマー型認知症患者でうつ症状も持つ方がボルチオキセチンを12ヶ月内服したところ、ボルチオキセチンにはうつ症状が良くする効果だけでなく、認知機能を改善する効果も認めたとのことです。



また、少し稀な例ですが、ボルチオキセチンがコロナ後遺症によるうつ病を改善したというエビデンスも出てきました。新型コロナウイルス(COVID-19)では、様々な後遺症が問題となります。味覚障害や咳が有名ですが、うつ病になる場合もあります。これに対する抗うつ薬の効果を調べた研究もご紹介します。



この研究には新型コロナウイルス感染後にうつ病となった方140名が参加されました。そのうち70名がボルチオキセチン、36名がエスシタロプラム、34名がセルトラリンという抗うつ薬で治療されました。その結果、ボルチオキセチンが最も有効で、エスシタロプラムやセルトラリンと比べて、うつ病の症状を良くする効果、認知機能を改善する効果の両方とも、ボルチオキセチンの方が良かったとのことです。これはオープンラベルの比較試験であり、治験よりもラフなデザインになりますから、エビデンスとして弱くありますが、もしかするとコロナ後遺症のうつ症状にはボルチオキセチンの方が良いのかもしれません。


このように、ボルチオキセチンがうつ病の人の脳に働き、頭を良くする効果を持つのは確かなようです。ただし、8週間使用しないと効果が分からないという問題もあります。


よく数日だけボルチオキセチンを飲んで中止してしまう人がいます。これだとボルチオキセチンの効果はありません。毎日継続的に8週間、つまりは2ヶ月間使い続けてみると、うつ病を治す効果や、頭を良くする効果があらわれます。


継続は力なりということわざがありますが、ボルチオキセチンを使う場合も同じことが言えます。すぐに中止しては意味がありませんから、せめて2ヶ月はボルチオキセチンを継続することをおすすめします。


また、繰り返しますが、うつ症状がないのにボルチオキセチンを内服しても頭が良くなることはありませんので、あらかじめご了承ください。

最近の記事
bottom of page