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オランザピンの体重増加を防ぐサミドルファン

更新日:2023年3月27日

このページについて:オランザピンには体重増加の副作用があります。しかし、サミドルファンという薬をオランザピンと一緒に使うと体重が増えにくくなるようです。


どの薬にも副作用のリスクはあります。副作用は軽いものから重篤なものまで様々です。薬を使ってすぐに副作用が出る場合もあれば、遅れてやってくることもあります。飲み始めだけ副作用が出て、しばらくすると消えることも多いです。本当に色々なパターンがあります

薬の副作用が出た場合、その薬をやめて他の薬に変えるという手法が一般的です。ただし、それが難しい場合は、他の薬を使って副作用を打ち消すこともあります。例えば、副作用で便秘になった場合に下剤を使うという方法です。

精神科の薬も副作用と無縁ではありません。オランザピンという薬は、非常に多くの作用を持つ薬であり、統合失調症という幻覚や妄想が出現する病気や、双極性障害という気分が高揚したり落ち込んだりする精神疾患の治療に用います。抗精神病薬といわれるグループの一種です。

このオランザピンという薬の副作用の一つが体重増加です。食欲を増やしたり、脂肪をつきやすくしたりという作用があり、体重が増えてしまうのです。

すごく痩せた人の体重が増える分には問題ないのですが、肥満体型になっていくのは問題が多いです。太りすぎると、見た目だけでなく、体にも悪いですからね。オランザピンの体重増加という副作用は多くの人を悩ませる問題です。

今回は、オランザピンの体重増加という副作用を他の薬で打ち消すという研究を紹介します。

この研究では、サミドルファンという薬によりオランザピンの体重増加という副作用が弱められるかどうかが検証されました。サミドルファンはオピオイド拮抗薬と呼ばれる薬の一種です。オピオイドはいくつかの薬の総称で、モルヒネなど痛み止めに使う医療用麻薬が含まれます。このオピオイドの作用をブロックするのがオピオイド拮抗薬です。

この研究では、統合失調症の治療にオランザピンと同時にサミドルファンを使いました。そして、オランザピンとプラセボ(偽薬)で治療した人たちと比較します。プラセボは薬効がないニセモノの薬ですから、ようはオランザピンだけを使ったということです。治療期間は12週間ですから、およそ3ヶ月です。

研究に参加した患者さんたちは、サミドルファンの用量によって4つのグループに分けられました。下に一覧をのせます。

  1. オランザピンとプラセボ(つまりサミドルファン0mg)

  2. オランザピンとサミドルファン5mg

  3. オランザピンとサミドルファン10mg

  4. オランザピンとサミドルファン20mg

このグループ分けはランダムに行われます。そして各グループの治療効果や副作用を調べて数値化し比較するのです。こういう方法をランダム化比較試験と言います。

さて、この結果ですが、統合失調症に対する治療成績はどのグループも同等であり、違いはありませんでした。少なくともサミドルファンを使うと治療成績が下がるわけではなさそうです。

そして、体重増加の方ですが、サミドルファンを使うとオランザピンだけを使うよりも体重が増えにくくなることが分かりました。各グループの体重増加を数値で見ると以下の通りです。%とkgの両方で表示されています。

  1. オランザピンとプラセボ:4.1%(2.9 kg)増加

  2. オランザピンとサミドルファン5mg:2.8%(2.1 kg)増加

  3. オランザピンとサミドルファン10mg:2.1% (1.5 kg)増加

  4. オランザピンとサミドルファン20mg:2.9% (2.2 kg)増加

サミドルファンを使ったグループの方が、オランザピン+プラセボのグループよりも数値が少ないですよね。

サミドルファンを使ったグループを総じて計算すると、2.6%(1.9 kg)の体重増加という結果だったようです。これに対して、オランザピンとプラセボのグループが4.1%(2.9 kg)増加ですから、明らかにサミドルファンを使う方が体重増加が少なくてすむという結果です。ただし、サミドルファンの用量を増やしても効果は上がらないようですね。あまり数値は変わりません。

また、サミドルファンをオランザピンと一緒に使うと、眠気、めまいや便秘という副作用が増えたということです。これらはオランザピンの副作用として多いものです。もしかすると、サミドルファンはオランザピンの体重増加という副作用は抑えるものの、他の副作用は強めてしまうのかもしれませんね。ただ、総合的に見てサミドルファンとオランザピンを一緒に使った場合の副作用は軽度と捉えられています。

さて、一長一短の結果ですが、どうしてもオランザピンによる体重増加を抑えたい人には良い結果かもしれません。今後、実際の診療に応用される日は来るのでしょうか。

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