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ベンゾジアゼピンの依存

  • 斎藤知之
  • 6月26日
  • 読了時間: 6分

ベンゾジアゼピンの依存

ベンゾジアゼピンを長期に使用している方で、減らしたい、やめたいということを希望し、当院(よりどころメンタルクリニック桜木町)にいらっしゃる方は少なくありません。


ベンゾジアゼピンには抗不安薬と睡眠薬があり、軽度の依存性があるため、1ヶ月以上続けて使用すると止めにくくなります。ただし、短期的な使用にとどめれば大きな問題はないため心配しなくても大丈夫です。以下、依存性やベンゾジアゼピンの減量方法について詳細に解説します。


なお、睡眠薬や安定剤としてではなく、てんかんの治療としてベンゾジアゼピンを使っている場合は、ベンゾジアゼピンを減らすと、てんかん発作が再発することがあります。この場合は、最近のてんかん発作の頻度を確認したり、脳波検査を行ったり、他の抗てんかん薬を調整したりという別の方法が必要になりますので、ここで紹介した方法は参考にしないでください。


目次


ベンゾジアゼピンとは


ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)は脳に作用する向精神薬の一種です。ベンゾ(benzo)とも略されます。ベンゾジアゼピンは不安を取るタイプ(抗不安薬)と、睡眠を促すタイプ(睡眠薬)に大別されます。その他、筋肉の緊張をとったり、てんかん(意識を失ったり、けいれんしたりする症状)を止める作用もあります。即効性があり、便利な薬ではあるのですが、副作用もあります。


ベンゾジアゼピンの副作用でよく問題になるのが依存性です。最近はベンゾジアゼピンの依存性についてご存じの方が増えましたが、過剰にうわさされることも多くなってきました。これは覚せい剤ほどの強い依存性ではないので過剰に心配しなくても良いのですが、お酒やタバコと同じように、やめたくてもやめられない状態になることがあります。ベンゾジアゼピンに依存すると、薬が切れた時に「また薬が欲しい」と強く思うようになります。このように気持ちの面で依存してしまうことを精神的依存と言います。


ベンゾジアゼピンには身体的依存というものもあります。体が薬に依存してしまい、薬を中断すると離脱症状が現れるのです。ベンゾジアゼピンの離脱症状は色々とあります。例えば、動悸(心臓の鼓動が早くなる)、発汗、頭痛、震え、筋肉の痛み、めまい、吐き気などです。また、不安になったり、イライラしたり、眠れなくなったりと情緒不安定になります。記憶力や集中力が落ちることもあります。ひどいと錯乱状態になったり、全身けいれんを起こしたりして、生命の危険が生じることもあります。なので、ベンゾジアゼピンを長く使っている人は、急にやめてはいけません。やめる場合は、少しずつ減らします。


なお、病気の「依存症」と薬の依存は少し違います。依存症とは、依存によって生活が障害されている場合になります。たとえば、朝からベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使って1日中ふらふらになり仕事や家事ができなくなるとか、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を何度も過量服薬するような状態です。アメリカの統計では、ベンゾジアゼピンを使っている人の1.5%がベンゾジアゼピン依存症になるとのことで、そんなに多くはありません。


依存のほか、ベンゾジアゼピンには、集中力や記憶力の低下といった認知機能障害という副作用もあり、これにより仕事のミスが増えたり、交通事故のリスクが上がるなどの問題があります。また、多量にベンゾジアゼピンを飲むと自分を抑えられなくなる脱抑制という副作用もあります。これはお酒に酔っ払った状態を想像してもらえると理解できると思いますが、攻撃的になったり衝動的になったりします。また、お年寄りだと、ベンゾジアゼピンにより転びやすくなることがあります。


次に、ベンゾジアゼピンの依存への対応について解説していきます。


ベンゾジアゼピン依存の予防


まずは依存を防ぐ方法について解説します。先述したとおり、ベンゾジアゼピンを1ヶ月以上使い続けると依存が出でくるので、ベンゾジアゼピンは短期間の使用にとどめることが大事です。


また、たくさん使い過ぎないことも大事です。ジアゼパム換算で10mg以上のベンゾジアゼピンを使用すると依存が出やすくなります。ジアゼパム換算とは、ベンゾジアゼピンがジアゼパム(これもベンゾジアゼピンの一種です)では何mgに相当するのか計算する方法です。例えば、ベンゾジアゼピンの一種であるアルプラゾラムの1.6mgという量は、ジアゼパムの10mgに相当します。


効果の短いものを効果の長いものに置き換える


すでにベンゾジアゼピンを何ヶ月も使っている方は、どうやって減らすか悩まれているかもしれません。


ベンゾジアゼピンの作用時間が短いもの(半減期が短いもの)ほど離脱症状が出やすいです。今現在、効果の短いベンゾジアゼピンを使っている場合は、効果の長いベンゾジアゼピンに置き換えてから減らす方が、離脱症状が出にくいため、減らしやすくなります。


たとえば、現在内服しているベンゾジアゼピンを、ジアゼパムという効果の長いタイプのベンゾジアゼピンに置き換えてから減らすという方法があります。この場合は、先ほど説明したジアゼパム換算を使います。現在内服しているベンゾジアゼピンがジアゼパム換算で何mgなのかを計算してから、同じ量に置き換えます。その上で徐々に量を減らしていきます。


ベンゾジアゼピンは少しずつ減らす


ベンゾジアゼピンは急にやめると離脱症状が出て危険なので、少しずつ減らしていくことが大事です。参考文献では最低でも10週間以上かけて少しずつ減らし、中止していくようにと書かれています。つまり、目安は3ヶ月くらいです。もちろん、もっと長い時間がかかる場合もあります。


精神状態を安定させる


精神状態が安定している人ほどベンゾジアゼピンを減らしやすいです。逆に、精神的に不安定な時は、無理に減らさない方が良いでしょう。減らすと焦燥感が出たり、眠れなくなったりしてしまいます。薬を減らす前に、まずは気持ち・感情を安定させることが大事です。なかなか気持ち・感情を安定させることができない場合は、ベンゾジアゼピン以外の薬により心を落ち着かせてから、ベンゾジアゼピンを減らす方法もあります。たとえば、うつ病や不安症ではSSRIという種類の薬を使いますが、これにはベンゾジアゼピンのような依存性がありません。うつ病や不安症でベンゾジアゼピンを使っている場合、SSRIを使って、精神状態が安定してからベンゾジアゼピンをゆっくり減らして中止していき、最後にSSRIを中止すれば全ての薬が無くなります。


以上になります。ご参考になれば幸いです。


参考文献:

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