自己免疫性甲状腺炎と不安、抑うつ
更新日:2023年3月27日
このページについて:自己免疫性甲状腺炎という甲状腺の病気があると、不安障害やうつ病になりやすいという調査報告を紹介します。
この前は、炎症という免疫の働きと双極性障害という精神疾患の関わりについて調べた研究を紹介しました。
実は、免疫と精神疾患の関連性を指摘する研究は他にも沢山あります。今回は自己免疫性甲状腺炎という病気と、うつ病や不安障害との関係を指摘する研究論文を紹介します。
本来、免疫はウイルスや細菌などの外敵と戦いますが、間違えて自分を攻撃してしまうことがあります。自分の免疫が自分自身を攻撃してしまう病気を自己免疫性疾患と呼びます。
自己免疫性甲状腺炎は、自己免疫性疾患の一種で、自分自身の免疫が甲状腺という組織を攻撃してしまう病気です。
甲状腺を攻撃する自己抗体というものが作られてしまうと、この病気になります。アメリカのデータですが、人口の4-13%に自己免疫性甲状腺炎が見つかるとのことで、かなり多い病気です。男性と女性では、女性に多いという特徴もあります。
甲状腺は喉のあたりにあり、代謝や活力を出すホルモンを分泌しています。甲状腺を攻撃する自己抗体ができても、甲状腺ホルモンは正常値なことがあります。ですから、甲状腺ホルモンの検査をしても異常が見つからないのです。この場合は潜在性の自己免疫性甲状腺炎などと呼びます。
今回ご紹介する研究では、甲状腺ホルモンが異常な場合だけでなく、一見して異常が無いように見える潜在性の自己免疫性甲状腺炎も含めています。
この研究は、今まで発表された論文のデータを集めるメタ解析という手法を用いています。それで、過去の文献を調べたところ、36,174人分のデータが集まったそうです。
この結果を見ると、自己抗体甲状腺炎があると、うつ病や不安障害になる確率が明らかに高いことが分かりました。
甲状腺ホルモンに異常があると、うつ病や不安障害の症状が出ることがあります。しかし、甲状腺ホルモンは正常値でも、甲状腺に対する免疫の異常があれば、うつ病や不安障害になりやすいという結果でした。これは、ホルモンの異常だけではなく、免疫の異常もうつや不安という精神症状に関わっている可能性を示しています。
今後、免疫と精神疾患が関係するメカニズムが解明されれば、新しい治療法の確立に結びつく可能性があります。免疫系の薬が精神症状の改善のために使われる可能性もあるわけです。
今後の研究の発展に期待です。
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