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認知症の精神症状の治療

更新日:2021年2月9日



認知症には様々なタイプがありますが、どの認知症でも精神症状が出る可能性があります。認知症の精神症状や異常行動は、英語でBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれます。これには、様々なものがあります。自分がなくしたものを誰かに盗まれたと思い込む(物とられ妄想)、イライラ、攻撃性など他者へ強く影響するものもあります。他には、アパシーといって意欲がなくなる症状や、うつ、不安もありますし、ありもしないものが見えたり聞こえたりする幻覚症状が出る場合もあります。眠れなくなること(不眠)や、寝すぎてしまう(過眠)、昼に寝て夜起きてしまう体内時計の乱れ(概日リズム障害)など、睡眠の問題も出てきます。


認知症の精神症状を治療する際に、どのように治療について考えていくのかを細かく解説します。プロセスを項目毎にまとめましたので、御覧下さい。


病状と原因の評価:まずは、どのような認知症があり、どのような精神症状や問題行動があるのか、しっかりと評価することが第一です。また、精神症状の原因についてもよく考えます。


精神症状と言うと心理的なストレスが原因と考えてしまう人が多いですが、もっと物理的、フィジカルな原因の場合もあります。例えば、痛みが精神症状の原因になる場合があります。認知症の方で、痛みによりイライラ、不眠、抑うつなどの精神症状が出るケースは珍しくありません。この際は、疼痛緩和、つまり痛みを和らげる治療が最優先です。


認知症の精神症状の原因は他にも沢山あります。ビタミン欠乏、むずむず脚症候群(レストレスレッグ症候群)、てんかんなど様々です。感染症や内臓疾患でせん妄と呼ばれる精神症状が急に出現することもあります。身体の病気が精神症状にも関係することを知っておいて下さい。


理解:まずは介護する人が認知症の精神症状について理解することが大事です。本人がどうして不安なのか、なぜイライラしているのか、多少なりとも理屈が分かると、納得できますし、介護する人の気の持ちようも変わってきます。それが本人にも良い影響を与えます。


介護・福祉サービスを整える:適切な介護・福祉サービスは、本人の精神症状を和らげてくれます。家族だけで抱え込まずに、介護・福祉サービスを適切に利用するとを考えましょう。


運動・エクササイズ:なるべく毎日、適度に運動することにより精神症状の改善が期待できます。また、運動には認知症の進行を遅らせる効果もあると言われます。散歩、ウォーキングと行った軽い運動で十分です。


音楽療法:音楽は人を楽しませたり、気持ちを落ち着かせる効果があります。ぜひ試してみましょう。


薬物療法:高齢な人に薬を投与する場合は、副作用が出やすいため、少ない量から始めて、少しずつ増やす方法論が原則です。以下で具体的に説明します。


非定型抗精神病薬:抗精神病薬とは、脳のドパミン神経系という神経ネットワークの働きを抑えることで、認知症に伴う幻覚、妄想、イライラといった興奮系の精神症状を和らげることができます。抗精神病薬には定型(第一世代)と非定型(第二世代)があり、第二世代の方が副作用が少ないためよく使われます。ただし、高齢者では非定型抗精神病薬でも、パーキンソン病の症状にも似た副作用(パーキンソニズムとか錐体外路症状などと言います)が出やすいです。これは手足が動きにくくなったり、勝手に震えたりする症状です。また、喉の動きも悪くなり、食べ物や飲み物、だ液を飲み込む能力が低下する嚥下障害という副作用もあります。こうした副作用がなるべく出ないように、認知症の方が使う場合は成人の用量よりも少なめから始めます。以下、代表的な薬の推奨用量です。


  • アリピプラゾール:3-9mg

  • クエチアピン:25-100mg

  • オランザピン:2.5-10mg

  • リスペリドン:0.5-2.0mg


この他にペロスピロンやチアプリドなども使用されます。


抗てんかん薬:カルバマゼピンというてんかんの治療薬は気分を安定させる効果があります。カルバマゼピンは認知症に伴う興奮を抑える効果があります。ただし、ふらつきなどの副作用が出やすいので注意が必要です。


ベンゾジアゼピン:睡眠薬や不安を取る薬にはベンゾジアゼピンという種類があります。レビー小体型認知症に伴うことが多いレム睡眠行動障害にはクロナゼパムというベンゾジアゼピン系の薬が有効です。レム睡眠行動障害は寝ている時に体が動いたり、寝言を言ったりする病気です。


非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、高齢者では転倒などの副作用が出やすいため、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬の方が向いています。非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ラメルテオン、スボレキサント、レボレキサントなどがあります。


入院治療:最後に、入院治療について簡単に解説します。日本では認知症で精神症状が出た場合に、精神科に入院して治療することができます。この際は、認知症の人だけに特化した病棟(認知症治療病棟)に入院することが多いです。認知症の人がうつ病や統合失調症など、他の精神疾患の人々と一緒の病棟に入院すると、コミュニケーションがうまくいかずトラブルになることもありますし、認知症の人の多くは介護が必要になるので、介護に特化した人員や設備が必要です。このため、認知症治療病棟など、認知症に特化した病棟が作られています。


もし入院について検討するのであれば、あらかじめ病院に連絡し、認知症の人の入院が可能か否かを確認する方が良いでしょう。また、行政と連携して認知症を取り扱う入院施設を探すことができる地域もあると思います。この場合、役所が窓口になってくれます。また、入院する際には、同意書の作成が必要になりますが、認知症の人は判断力が低下しているため、家族などに代理で同意をお願いすることが多いです。これを、医療保護入院と呼びます。ご本人一人の意思だけで入院することは稀だと思いますので、ご家族も一緒に病院に来る準備をしておく方が良いでしょう。


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