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認知症の種類・タイプ

更新日:2023年3月27日


認知症には様々なタイプがあり、それぞれ症状が異なります。認知症の症状は記憶障害だけではありません。初期には物忘れが目立たないタイプの認知症もあります。代表的な認知症のタイプを紹介します。


アルツハイマー型認知症


アルツハイマー型認知症はゆっくりと進行するタイプの認知症で、認知症の種類の中では最も多いです。一般的には、ついさっきのことを忘れてしまう、物を置いた場所が分からなくなるなどの記憶に関する症状から出現します。今日の日付も分からなくなり、自分の年齢も間違えるようになります。


アルツハイマー型認知症を発症して数年が経過すると、昼夜が分からなくなったり、道に迷うようになったりします。また、非常に不器用になってしまい、道具の使い方が分からなくなったり、服がうまく着れなくなったりします。これを失行と言います。さらに進むと、トイレで排泄するやり方も分からなくなります。徐々に言葉も忘れていきますので、会話は通じにくくなります。そして、自分の家にいても自分の家だと認識できなくなり、家族の顔すら忘れてしまい、例えば自分の子供を見ても誰だか分からなくなります。これは、家族にとって辛いことかもしれません。


アルツハイマー型認知症の人の脳をCTやMRIなどの画像検査で見ると、記憶を作る海馬という部分の周囲、側頭葉という場所の内側あたりが痩せていたり、頭頂葉という頭のてっぺんあたりが痩せていたりします。


アルツハイマー型認知症は症状の経過と脳の画像検査から診断が可能ですが、ほかの可能性を考えて血液検査も行います。内臓の病気やホルモンの病気などでも似た症状が出るため、これらを血液検査で確認するのです。初期で診断が難しい場合などはSPECT検査を行うこともあります。SPECT検査では、後部帯状回から楔前部、頭頂葉にかけて血流低下が見られます。最近では、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβを測定する方法も開発されていますが、まだ日本では保険適応にはなっていません。


レビー小体型認知症


レビー小体型認知症は認知症とついていますが、初期には物忘れが目立たないことも多いです。レビー小体型認知症の特徴は、幻視とパーキンソニズムになります。


幻視とは、ありもしないものが見えるというものです。例えば、人がいないのに人が見えたり、何もないところに動物や虫が見えたりします。レビー小体型認知症では、暗くなると幻視が見えることが多いです。

パーキンソニズムとは、筋肉に力が入り続けてしまい、体が動きにくくなったり、勝手に手足が震えたりする症状のことで、パーキンソン病と同じ症状です。名前もパーキンソン病に由来します。パーキンソニズムが出ると、顔の筋肉がこわばるため、無表情になります。実は、パーキンソン病とレビー小体型認知症は、病理学的には同じ病気であるため、症状が似ているのです。


この他にも自律神経症状といって、内臓を調整する自律神経の働きが弱まるため、便秘したり、汗が出たり、血圧が不安定になって立ちくらみがしたりするなどの症状が出てきます。


その他、レストレスレッグ症候群(別名むずむず脚症候群)といって夜に脚がむずむずして眠りづらくなる病気や、レム睡眠行動障害といって寝ている最中に寝言を言ったり、手足を動かしてしまう症状もレビー小体型認知症ではよく見られます。


レビー小体型認知症は脳の画像や症状などから診断します。初期には頭のCTやMRIなどの画像検査では異常が見られないことが多く、SPECT検査や脳のドパミントランスポーターという部分をスキャンする検査(DaTスキャン)、心臓周囲の自律神経を見る検査(MIBG心筋シンチグラフィ)などを用いて評価します。


血管性認知症


脳には多くの血管が走り、脳に栄養や酸素などを供給しています。この血管が詰まったり、破れたりすると脳に障害が起きます。脳の血管が詰まることを脳梗塞、脳の血管が破れて出血することを脳出血と言います。こうした脳の血管の問題で脳に障害が起き、その結果として認知症になる場合を血管性認知症と呼びます。


血管性認知症では、脳梗塞や脳出血により手足の麻痺や呂律不良などの症状が見られますが、認知症の症状だけが出る場合もあります。血管性認知症の症状は、どこの血管が障害されたかによって違います。例えば、言葉の機能をコントロールする部分に向かう血管が障害されると言葉が話せなくなったり、理解できなくなったりします。記憶の障害が出ることもあれば、計算能力の障害が出ることもあります。また、妄想など様々な精神症状も出ます。つまり、症状は多種多様なのです。


血管性認知症の進行は急に来るのが特徴です。例えば、アルツハイマー型認知症はゆっくりと進行しますが、血管性認知症の場合は脳の血管の問題が起きた途端に進行するので、ある時から急に認知症が進むという階段状の経過を辿ります。血管性認知症は頭のMRIやCTなどの検査で評価します。MRIは脳梗塞を検出するのに優れており、CTは脳出血を検出するのに優れています。


アルコール関連認知症


アルコールの大量摂取は肝臓を壊すだけでなく、体のあちこちに問題を起こします。脳の障害もその一つです。大量に飲酒すると脳の細胞が傷つきますし、ビタミンB1などの栄養素が消費されて欠乏し、これによっても脳に障害が出ます。ビタミンB1の不足により脳に障害が出ることを、ウェルニッケ・コルサコフ症候群と言います。こうして脳に障害が出ると、認知症の症状が出ます。これを防ぐには、とにかくお酒をやめる、最低でもお酒を減らすしかありません。また、ビタミンB1などの栄養素の不足は、サプリや薬により補うこともできます。もしもビタミンB1の不足によりウェルニッケ・コルサコフ症候群になった場合は、すぐにビタミンB1の大量投与をしないといけません。すぐに治療すれば、認知症の症状が回復する可能性が残されていますが、しばらく放置すると回復は難しくなります。


特発性正常圧水頭症


脳は脳脊髄液(単に髄液とも言います)という透明な液体に包まれています。この脳脊髄液が何らかの原因で増えて脳を圧迫することがあり、これを水頭症と呼びます。高齢者に多いのは特発性正常圧水頭症というものです。特発性正常圧水頭症の主な症状は、認知症の症状の他に、歩きにくくなること(歩行障害)、失禁が増えることです。認知症の初期から歩行障害や失禁が出る場合は、特発性正常圧水頭症を考えるべきです。


特発性正常圧水頭症は頭のCTやMRIなどの画像検査で確認することができます。こうした画像検査をすれば、側脳室という部分に脳脊髄液が溜まって膨らんでいるのが見えますし、その他にも特徴的な所見が見られます。その後、腰から脳脊髄液を採取して、症状の回復が見られるかどうかを調べるタップテストなどを行い診断します。


特発性正常圧水頭症は、増えすぎた脳脊髄液を他の場所に流す手術により治療可能ですが、やはり早期に治療しないと回復が難しくなります。


前頭側頭葉変性症


前頭側頭葉変性症とは、脳の前の部分である前頭葉や横の部分である側頭葉という部分に限局して障害が出る病気です。頭のCTやMRIなどの画像検査をすると、前頭葉や側頭葉だけが縮んでいるのが分かります。


前頭側頭葉変性症には、いくつかのタイプがあります。問題行動などが主体の行動障害型、言葉や物事の理解が難しくなる意味性認知症、言葉がうまく出てこなくなる進行性非流暢性失語などです。これらは認知症の一種なのですが、初期には物忘れが目立ちません。言葉の症状が目立ったり、繰り返し同じことばかりするなどの行動面の変化が目立ったりします。特に行動障害型では、行動面の異常が目立つために、うつ病や統合失調症などの精神疾患と間違われることも少なくありません。


その他


脳の病気であればなんでも認知症の原因になる可能性があります。治療可能かどうかは、原因となる病気次第です。アルツハイマー型認知症など、多くの認知症は進行を遅らせることはできても回復は難しいです。しかし、治療可能な脳の病気により認知症に似た症状が出ている場合は、原因となる脳の病気を治せば認知症の症状も無くなる可能性があります。だからこそ、まずは認知症の原因を探るのが大事なのです。認知症の症状が出た場合は、とにかく検査することが大事です。

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