強迫性障害の治療
更新日:2021年4月4日
強迫性障害の治療には、薬物療法と精神療法(心理療法)があります。
薬物療法では、SSRIというタイプの抗うつ薬が主に使われます。SSRIは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)の略語で、セロトニンという物質を増やす薬です。うつ病や不安障害などの治療にも用いられますが、強迫性障害の治療にも有効です。また、三環系抗うつ薬に分類されるクロミプラミンなども強迫性障害の治療に有効です。
SSRIも三環系抗うつ薬も、低用量から始め、段階的に用量を増やします。SSRIや三環系抗うつ薬を強迫性障害の治療に用いる場合は、高用量でないと効果が出ない場合が多いです。
抗うつ薬の選択肢は沢山あります。一種類を使って効果が無い場合は、他の種類に切り替えたり、複数を重ねて使ったりします。ただし、抗うつ薬の効果を確かめる時は、間違った使い方をしていないか確認しましょう。抗うつ薬は毎日飲み続けないと効果は出ません。また、有効量以下で使っても効果は乏しいので、注意して下さい。人によりますが、抗うつ薬の効果が出るのに数ヶ月かかる場合もあります。このため、抗うつ薬は3ヶ月くらい使い続けてから効果を判定します。
抗うつ薬の効果があった場合、1年以上は同じ量で使い続けることが勧められます。減らすと症状がぶり返す(再発)リスクが高いからです。病状が安定し抗うつ薬を減らす時は、数週間から数ヶ月かけて少しずつ減らします。いきなり中断すると、めまいや吐き気などの離脱症状(中断症候群)が出ますが、段階的に減らせば大丈夫です。
抗うつ薬以外の薬として、アリピプラゾールやリスペリドンなどの非定型抗精神病薬という種類の薬を抗うつ薬と一緒に使うこともあります。これを増強療法と呼びます。また、最近ではグルタミン酸受容体に作用する薬も強迫性障害の治療に有効だという科学的なデータが出てきています。メマンチンやラモトリギンという薬の有効性が確認されているようです。しかし、日本では抗うつ薬以外の薬は保険上の認可が得られていないという問題があります。
強迫性障害の精神療法は、暴露反応妨害法という方法が一般的に用いられます。これは、あえて強迫思考を呼び起こすような状況に身を置いて、強迫行為を我慢するという方法です。例えば、汚いと思うものをあえて触り、それでも手を洗わないで我慢するというやり方になります。これがうまくいけば、少しずつ強迫思考も強迫行為も改善していくのですが、我慢するのが治療の基本なので、少し大変な治療と言えるかもしれません。
暴露反応妨害法は、薬を使わず単独で行っても良いですし、薬による治療をしながら行っても大丈夫です。強迫性障害を薬を使わないで治すのは大変なので、まずは暴露反応妨害法を単独でやってみて、難しいなと思った時は、薬を使いながらやってみるのが良いと思います。
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