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器質性精神障害について

斎藤知之

このページについて:器質性精神障害について解説します。これは体の病気が原因で精神症状が出る病気です。


精神疾患の原因は何かと聞かれたら、皆さんはどんなことを思い浮かべますか。

もしかすると、心理的なストレスを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、実際は精神疾患の原因は複雑であり、複数の要素がからみ合っています。当サイトでは、複数の要因を、生物学的要因、心理的要因、社会的要因に大きく分けて考える、生物-心理-社会モデルという考え方を紹介しています。

精神疾患によっても、どのような要因がどれだけ関わるか様々なのですが、器質性精神障害は、身体的な病気が原因で精神症状を起こすものを指します。身体の病気が原因なので、生物学的な要素が強い精神疾患と言えます。

器質性精神障害とは大きな分類で、その中に色々な疾患が入ります。

例えば、てんかんという、突然に気絶したり、けいれんしたりする脳の病気がありますが、てんかんにより興奮や幻覚などの精神症状が出ることがあります。このような、てんかんに伴う精神症状は器質性精神障害の一例です。

他にも、ホルモンの異常、免疫の異常、癌などで精神症状が起きることがあります。この場合は、精神科的な治療と同時に、原因となる身体の病気も治療しないといけません。考えてみれば当然ですが、原因を取り除かないで対症療法だけを行なっても、完治は難しいですよね。

器質性精神障害という名前は、身体的な病気が原因で精神症状出るという構図、つまり、因果関係がある程度はっきりしている場合に用いられます。

ただ、これもまた人間の心の奥ゆかしさですが、そんなに単純でなく、因果関係が分かりにくい場合も多々あります。

身体的な病気はたしかに関係しているだろうけど、心理的なストレスも抱えている場合はどちらが原因か特定が難しいですよね。

また、最近の研究では、精神症状が原因で身体的な不調が起きたり、すでにある身体疾患が悪化することも分かっています。例えば、高血圧や糖尿病などは精神疾患で悪化します。

そして、さらに複雑なことに、精神症状と身体がお互いに影響し合うことも珍しくありません。つまり、精神症状が原因で身体的な異常が起きて、その身体的な異常が原因で精神症状が起きるという具合に、ループを形成することもあるのです。そうなってくると、評価するのは難しくなりますね。

心と体の関係については、当サイトでも各疾患ごとに解説しています。

精神と身体、心と体の関係は、まだまだ分からないことも多く、世界中で研究されています。精神疾患の生物学的な要素を評価する検査(バイオマーカーと呼びます)も開発が進んでいるので、いずれ実用化されることがあるかもしれません。

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