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日本は職場環境が悪い

斎藤知之
職場環境

職場の満足度調査として、海外のものですが、Q12というアンケート指標があります。この中には、たとえば、今の職場は仕事しやすい、同僚や上司が自分を大切にしてくれる、この職場で成長できるなどの質問が含まれています。



こうした質問に「そう思う」と答える人は、職場でやる気を出していると考えられます。これをエンゲージメント(職場との結びつき、職場に対する熱意)と呼びますが、Q12は、職場に対するエンゲージメントの指標とも考えられています。


このQ12を用いて、職場に対してやる気をもつ、熱心な従業員の割合を国際的に比較するデータがあります。これを見ると、日本は熱意ある社員の割合が他の国よりもだいぶ低いそうです。


「2022 年の日本の労働者の中で仕事に従事している人で職場に積極的に参加し、熱心に取り組んでいる人はわずか 5% であり、世界平均の 23% とは大きく異なる結果が出た。」


もしもあなたが、今の職場に満足しておらず、職場のために働く意欲がないとしても、特に不思議はありません。そもそも日本全体として、職場に満足している人が少ないのです。昭和時代のモーレツ社員のような人は、失われて久しいということです。


経営面から考えますと、職場全体の従業員のやる気が低下すると、職場全体のパフォーマンスが下がり、コストが増えます。たとえば、従業員たちの仕事の速度が落ちることにより、それをカバーするために、より多くの従業員を雇用しなければならなくなります。また、退職者が増えれば、新たに、人材を採用する必要も出てきます。つまり、企業側からすれば、人件費関連のコストが増えるわけです。このせいで日本の企業は経費・コストが高くなり、利益が上がらないのかもしれません。

職場環境が悪い企業から、職場環境の良い企業へと労働者が移っていけば、職場環境の悪い企業は淘汰されます。すると、世の中全体としては、良い職場環境の企業が増えます。


もしも、今の職場環境がとても悪いと思うなら、転職するのも良い手段です。その方が、自分自身のためにもなり、ゆくゆくは世の中全体のためにもなるからです。


また、こうも日本の労働者が労働意欲が無くした原因は何かも疑問なところです。よく、年功序列で、成果主義ではないことが理由として考えられたりしますが、昔の日本の労働者が意欲的に働いていたことを考えると、理由は年功序列だけではないでしょう。


ここで一つの行政の資料「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況. 厚生労働省」を提示します。



これは、行政に相談のあった職場のトラブルをグラフ化したものですが、いじめ・嫌がらせという人間関係の問題が圧倒的に多いことが分かります。給与などの労働条件の問題はさほど多くありません。


つまり、日本の職場では人間関係のトラブルが多発しているのです。そして、どんどん増えています。グラフを見る限り、今後も職場内の人間関係のトラブルは増えそうです。


当然ですが、このようなトラブルが増えていたら、安心して働けませんし、労働意欲が出るはずがありません。これからの管理職の方には、こうした職場内の対人トラブルをいかに解決するか、というスキルが求められるでしょう。


私が当院「よりどころメンタルクリニック桜木町」で診療していても、職場の中での対人関係の問題が大きなストレスとなって、眠れなくなったり、仕事に行けなくなったりする方が沢山います。


この件については、精神医療全体の問題にもなると思われ、私の方で第1回日本外来精神医学会学術総会で、「職場での対人トラブルの増加と心理社会的介入の検討」という演題名で発表させていただきました。


職場で人間関係の問題を抱えてメンタルが不安定になった方は、精神科や心療内科にご相談ください。当院「よりどころメンタルクリニック桜木町」でもご相談を承っております。

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