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抗NMDA受容体脳炎の精神症状とは

更新日:2023年3月27日

このページについて:抗NMDA受容体脳炎という病気は免疫の病気ですが盛んに精神症状が出るため精神疾患と間違えやすいです。この精神症状を詳しく調べた研究を紹介します。


抗NMDA受容体脳炎という病気をご存知でしょうか。この病気はアメリカで有名になりまして、”Brain on Fire”という抗NMDA受容体脳炎を扱う映画まで作成されました。この映画は日本でも「彼女が目覚めるその日まで」というタイトルで公開されています。

この映画の中でも、抗NMDA受容体脳炎になった若い女性が精神疾患と間違って診断され、なかなかよくならないというシーンがあるのですが、この病気は精神症状が非常に強く出現するため、精神疾患と間違われやすいという特徴があります。

抗NMDA受容体脳炎は精神症状以外にも、けいれんや意識障害など様々な症状が出現することがありますが、精神症状だけが出ることもあり、精神疾患と見分けにくいのです。ただ、抗NMDA受容体脳炎の治療は免疫療法(免疫を抑える治療)であり、精神科の治療とは全然違いますから、しっかり見分けないと治療がうまくいきません。

今回は、その抗NMDA受容体脳炎は、どのような精神症状を出すのか調べた論文をご紹介します。これは、すでにある研究報告、論文などを集めて統計をとる系統的レビューという形式の論文になります。

ここでは333の論文から1100人のデータを引っ張ってこれたようです。この中で精神症状を詳しく報告していたのは505人でした。さらに、505人のうち個別に症状が報告されていたのは91%にあたる464人でした。今回の論文では、この464人の方々に注目して調べたようです。

年齢の中央値は27歳で、79%が女性でした。女性に多いという特徴が分かります。

全体の32%に卵巣奇形腫がありました。卵巣奇形腫とは、卵巣の腫瘍の一種で多くは良性です。ただ、卵巣奇形腫があると抗NMDA受容体脳炎になりやすいのです。

さて、精神症状ですが、割合で示すと、異常行動が68%、精神病症状(幻覚や妄想など非現実的な体験をする症状)が67%と多く見られました。また、うつ症状や躁症状(気分が高揚したり活動的になる症状)などの気分の問題が47%、不眠症が21%に見られました。また、カタトニア(緊張病)という体が固まったり、反応がなくなる症状があるのですが、それが30%に見られました。カタトニアは割と珍しい症状なので、30%は多いですね。この傾向は年齢や性別が異なっても変わらないようです。

また、精神病症状と気分の問題が混ざっている人が多かったという傾向も明らかになりました。つまり、抗NMDA受容体脳炎になると、様々な精神症状が同時に見られるという特徴があるのかもしれません。

抗NMDA受容体脳炎は髄液検査など様々な検査をしないと診断できません。精神症状がある人全員に髄液検査をするわけにはいきませんから、どの人に検査するのか判断が必要です。

今回の結果から見ると、精神病症状と気分の問題が混ざっている人やカタトニア症状がある人は、検査を考えてみても良いのかもしれません。

まあ、もう少し検査の必要性を判断する指標が欲しいところですが、少しずつ解明されてきてますね。今後、さらに解明されれば、臨床でも役になってくると思います。

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