ズラノロンは素早い抗うつ薬かも
今回は、ズラノロン(zuranolone)という、まだ治験中の抗うつ薬の論文の紹介です。
はじめに断りますが、ズラノロンはまだ治験中であり、日本で今後どうなるか、いつ発売するのかは全くの未定ですので、あまり期待せずにお読みください。
今までの抗うつ薬はセロトニンを介してうつ病を治療するという薬理作用でしたが、今回のズラノロンはGABA受容体に作用するというもので、作用機序が異なる点に注目です。
セロトニンを介する従来の抗うつ薬は、効果が出るのに2週間以上かかることが知られています。つまり、最初の2週間は効果がないのに我慢して薬を続ける必要があり、これが抗うつ薬の弱点でした。
しかし、ズラノロンは違うようです。
今回紹介する論文は、ズラノロンの2週間における効果と副作用を確認するものです。18歳から64歳までのうつ病患者さん534人にズラノロンまたはプラセボ(偽薬)を投与して、2週後にハミルトンのうつ病評価尺度で、うつ症状を評価しました。投与された薬が、ズラノロンか、効果のないプラセボ薬かは、ランダムに決まり、医師も患者もどちらの薬なのか分かりません(二重盲検比較試験です)。こうすることで治験の不正を防ぎます。
266人がズラノロン、268人がプラセボを投与されたそうです。
2週間後の評価では、ズラノロンが投与されたうつ病患者さんの症状は、プラセボを投与された人たちよりも、明らかに改善していました。これは統計学的に計算して意味のある結果でした。
しかも、投与3日目の時点で評価しても、ズラノロンが投与されたうつ病患者さんの症状は、プラセボを投与された人たちよりも、明らかに改善していました。
つまり、ズラノロンは投与して3日で効果が現れるわけです。これは従来の抗うつ薬よりも圧倒的に早いです。
また、この論文では、ズラノロンの重い副作用の可能性は低く、安全で使いやすい薬と評価されたようです。
従来の抗うつ薬の効果の遅さを改善したのは、大きなことです。
また、すでにズラノロンは産後うつ病に対して有効であることが分かっています。2023年8月に、アメリカで、ズラノロンの産後うつ病に対しての使用が公的に認められました(FDAという公的機関が認めました)。今後、日本でも同様に保険適用される日が来るかもしれません。
ただし、ズラノロンが2週間以上、抗うつ効果を維持できるかどうかは、まだ分かっていないそうです。
そもそも、うつ病は再発することが多いため、長期的に維持する薬が必要とされています。これを維持療法と呼びますが、ズラノロンが維持療法に適しているのかも不明です。
ズラノロンの抗うつ効果が、長い目で見てどうなのかは気になるところです。
ズラノロンは日本でも治験が行われています。まだ現時点では何とも言えませんが、その効果に期待したいところです。
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