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双極性障害の薬物療法 | 20年の動向

更新日:2023年3月27日

今回はアメリカの論文を元に双極性障害(躁うつ病)の薬物療法について解説します。


双極性障害とは、うつ病を繰り返す精神疾患ですが、うつ病の経過の途中で活動的で元気な状態になるなど両極端な症状が出ます。だから名前に双極がつくわけです。過剰に元気な状態を躁状態と呼び、古くは、躁うつ病と言われました。


双極性障害は多くの場合うつ病の症状が主体ですが、治療法はうつ病とは異なります。特に薬の使い方はかなり違い、うつ病と同じ薬で治療していても良くなりません。しかし、日本では、まだうつ病と同じように抗うつ薬を多用している心療内科や精神科の病院・クリニックが多く、問題になっています。


今回はアメリカの論文を元に、双極性障害の薬物療法について考え直したいと思います。ご紹介する論文は、1997-2016年のデータを解析したもので、双極性障害と診断された人の処方薬を調査しています。


調査の結果、双極性障害では抗精神病薬を処方される割合が、1997-2000年では12.4%だったのに対して、2013-2016年には51.4%に上昇していることが分かりました。


抗精神病薬とは、脳のドパミン受容体という部分に作用して幻覚や妄想を改善する効果のある薬です。統合失調症の治療にも使われます。最近の抗精神病薬はセロトニン受容体などにも作用し、副作用は減り、逆に効果の幅が増えました。最近の抗精神病薬は、非定型抗精神病薬とか第二世代抗精神病薬などと言われますが、双極性障害にも有効であることが分かり、すでに第一選択薬になっています。日本でも、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾールなどの抗精神病薬は双極性障害の治療でよく使われていますし、最近ですとルラシドンという抗精神病薬も注目を集めています。


一方で、これまで双極性障害の治療によく使われていた気分安定薬(例:炭酸リチウムなど)の処方は62.3%(1997-2000年)から26.4%(2013-2016年)に低下していたそうです。アメリカでは、流行の中心は抗精神病薬のようですね。


また、抗うつ薬の使用についても調べられています。双極性障害でも抗精神病薬や気分安定薬と一緒に抗うつ薬を使うことがあります。アメリカでは双極性障害に対する抗うつ薬の処方は47.0%(1997-2000年)から57.5%(2013-2016年)に上昇していました。


しかし、双極性障害に対する抗うつ薬の効果は限定的ですし、躁状態が起きるなどの問題もあります。この論文でも同じような事柄が注意喚起されていました。アメリカでも日本と同じ問題が起きているのかもしれませんね。


なお、当クリニックでは、双極性障害の治療の見直しを行っています。薬は正しく使わないと毒にもなります。科学的に効果が実証された薬を正しく使うことが大事ですし、副作用にも注意が必要です。双極性障害では科学的に推奨される薬の使い方がありますので、それに沿って治療するのが第一です。


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