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子供の脳と妊娠中のコルチゾール

更新日:2023年3月27日

このページについて:妊娠中のコルチゾールというストレスに関連するホルモンの値が、子供の脳に影響する可能性を指摘した研究論文を紹介します。


今回は、妊娠に関わるお話です。

妊娠中、お母さんとお腹の中にいる子供(胎児)は物理的に身体が繋がっています。このため、胎児が母親の影響を大きく受けるのは、当然です。例えば、妊娠中の母親がアルコールやタバコなどを摂取すると、お腹の子供に良くない影響が出ることは、多くの人が知っているでしょう。

しかし、それだけではありません。実は、最近の研究では、母親の心理的なストレスがお腹の子供に影響する可能性も考えられているのです。

今回は、母体と胎児の関係について読み解く研究論文を紹介します。こちらの研究で注目したのはコルチゾールというホルモンです。

コルチゾールは副腎皮質という内臓から血液中に分泌されるホルモンです。様々な役割を持つ、体に必要なホルモンなのですが、過剰に分泌すると体に悪影響が出ます。もっとも、それはどのホルモンでも同じ事が言えます。

コルチゾールは心理的なストレスの影響を受けやすく、強いストレスがかかると分泌が増加し、血中濃度が増加します。このため、精神疾患との関係も深いホルモンです。例えばうつ病になると、コルチゾールが増えたりします。このため、コルチゾールをストレスホルモンなどと呼ぶこともあります。

今回紹介する研究では、妊娠している女性70人が参加しました。胎児については生まれた後に調べられます。子供の脳は、MRIという磁力を使う検査機器を使って調べられました。もう少し具体的に言うと、脳の扁桃体という場所の神経ネットワークの密度が調べられています。

この結果、胎児が女の子の場合、母親のコルチゾールのレベルと扁桃体に関連性が見つかりました。コルチゾールの濃度が高いと、扁桃体がからむ神経ネットワークの結びつきが強くなるという結果です。コルチゾールはストレスの影響を受けるわけですから、ストレスが胎児の脳に影響を及ぼした可能性も考えられます。

こうした脳の変化が将来的にどう影響するのかまでは分かりませんが、母体の心理的なストレスが胎児の脳に物理的に影響する可能性を指摘したのは興味深いところです。

また、母親のコルチゾールが高いと、抑うつ的な行動が増えるという結果も出ました。これも胎児が女の子の場合だけです。

なぜか男の子は違うんですね。このように、性別によって母親からの影響が異なるというのも興味深い結果です。

この研究結果から考えるに、妊娠している女性は、なるべくストレスが少ない方が理想なのかもしれません。もちろん、妊娠中だけでなく、母親の心理状態は子供に影響するものです。母親が精神的に安定していることは、子供にとっても大事なことなんですね。

こうした研究結果を見ると、世のお母さんたちは、もっと守られてもいいのかなと思います。みなさんは、どのような感想を抱きますか?

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