不眠症の新しい分類
このページについて:不眠症の分類で、新しい分類法を導入しようとする動きがあったので紹介します。
多くの人が一度は、なかなか眠れないとか朝早くに目覚めてしまったという経験があると思います。時々、眠れなかったり、睡眠時間が短くなるだけなら特に問題ありませんが、これが何度も続くようになると、不眠症という病気として捉えるようになります。
不眠症と一言に言っても、さまざまなものがあります。色々な原因が考えられますし、治療法もたくさんあります。つまり、不眠症は多様なのです。
不眠症の分類は多々あるものの、どれも良いものとは言えないのが現状です。そこで、もっと良い不眠症の分類方法を作ろうという臨床研究がありましたので、ご紹介します。
これはオランダの研究です。オランダでは性格や睡眠、健康状態、ライフイベントなどを登録したデータベースを作っているようです。ここではその中から、合計4322人のデータが利用されたとのことです。このデータを潜在クラス分析という統計学的(数学的)手法を用いて解析し、クラス分けしました。その結果、下記の通り、五つの分類ができたそうです。
とても辛い
かなり辛いが、いい事があれば良くなる
かなり辛く、いい事があっても関係ない
少しだけ辛いが、状況次第で良くなる
少しだけ辛く、状況は関係ない
少し分かりづらいですが、ようは不眠の辛さの度合いと、周囲の状況への反応性で分類しています。
これが、診療において妥当なものかどうかも調べられました。新たに251人で平均して4.8年後に再評価されたところ、87%の確率で診断がそのまま変わっていなかったとのことです。ころころと変わらない診断だという証明になりますね。
また、五つのグループでは、治療によって治る確率や、うつ病になるリスク、睡眠脳波の測定結果などに差があることも分かりました。検査や治療の結果に違いが出るということも、診療する上で意義のある分類だということを示しています。どの分類でも同じ検査結果、同じ治療結果が出るのであれば、診療する上では分類する意味がありませんからね。
今回の研究のように、診断基準や疾患の分類を見直すのは良いことで、特に精神科の場合ではニーズが高いです。というのも、まだまだ精神疾患の診断基準は未成熟だからです。
実用的で、実際の診療に役立つ診断分類が作られるのが理想ですね。そのためには、多くの人のデータを集めてコンピューターなどで解析する手法が適しているのかもしれません。