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PTSDと炎症

更新日:2023年3月27日

今回は精神疾患と免疫の関連性について書かれた論文をご紹介します。


こちらはレビューという形式で書かれています。レビューとは、色々な研究論文のまとめみたいなものです。

この論文では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と炎症の関連性について指摘されています。炎症とは、私たちの体に何らかの有害な刺激が加わった時に起こる、免疫の反応のことです。例えば、体を思い切りぶつければ、筋肉や関節などに炎症が起きます。細菌やウイルスの感染でも炎症は起きます。例えば、細菌性肺炎は、肺に細菌が感染して炎症が起きることを言います。


心的外傷後ストレス障害とは、酷い暴力や事故などのトラウマ体験により、恐怖や不眠などが続いてしまう精神疾患です。英語の頭文字を取ってPTSDと略されます。


実は、PTSDの患者さんの体の中でも、炎症が起きているのではないかと言われています。様々な研究で、PTSDの患者さんを検査したところ、炎症を示す指標となる検査値が上昇しているという結果が出ているのです。


他にも、例えば、うつ病などでも同じような研究結果が報告されています。


精神状態が悪化すると炎症が起きるのか、炎症が起きるから精神状態が悪化するのか、それとも両方が正しいのか。精神状態と炎症の因果関係は、まだよく分かっていません。また、炎症を抑える治療がPTSDなどの精神疾患の治療に有効か否かも、まだ研究段階です。現在のところ、PTSDの薬物療法はSSRIなどの抗うつ薬が中心ですが、抗炎症薬を使う日も来るかもしれません。そのほか、炎症系の検査結果により、精神疾患の予後を予測するという研究もあります。


こうした研究が身を結び、いつの日か実際の医療現場でも利用される技術になると良いですね。今後の研究に期待したいところですね。


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