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強迫性障害の症状と治療

斎藤知之

強迫性障害

強迫性障害(強迫症)とは、何度も同じことを考えたり、何度も同じ行動を繰り返したりする病気です。


 

目次

 

強迫性障害の症状


強迫性障害(強迫症)の症状は、繰り返される考え、行動から成り立ちます。何度も同じことを繰り返し考えることを強迫思考(強迫観念)と言います。また、何度も繰り返される行動を強迫行為と呼びます。


たとえば、強迫性障害の方には、手が汚いという考えが繰り返し浮かび何度も手を洗う(手洗い強迫)人がいます。この場合、「手が汚い」という考えが強迫思考で、「手を洗う」行為が強迫行為です。他の例としては、鍵を閉め忘れたんじゃないかという考えが繰り返し浮かび、何度も鍵を閉めたか確認する(確認強迫)などがあります。この場合も同様に、「鍵を閉め忘れたんじゃないか」という考えが強迫思考で、「鍵を閉めたか確認する」行為が強迫行為です。


強迫思考と強迫行為が両方ある人が典型的ですが、どちらか一方だけということもあります。


ただし、誰にでも同じことを繰り返すことはありますから、それだけで強迫性障害とは診断しません。程度の問題が重要になります。たとえば、強迫思考や強迫行為のために、多くの時間を取られるとか(例:毎日1時間確認行為を繰りかえす)、強迫観念または強迫行為を止めたくても止められず非常に困っているなどのレベルまで強迫思考または強迫行為の症状が強い場合に強迫性障害と診断します。


また、最近ではチックなどの体が勝手に動く症状が繰り返される病気や、醜形恐怖症(些細な外見の問題を何度も考えたり何度も鏡を見て確認したりする)、皮膚むしり症(皮膚を繰り返しむしる)、抜毛症(毛を繰り返し抜く)、病気不安症(病気ではないかと何度も繰り返し考えてしまう)、パラフィリア(性的問題行動を繰り返す)なども、強迫性障害の仲間として捉え、強迫性障害と同様の治療を行うことがあります。


強迫性障害の症状は他の精神疾患でも見られます。例えば、統合失調症やうつ病などで、強迫性障害の症状が出ることは多いです。


強迫性障害の治療は薬物療法と精神療法があります。


薬物療法


強迫性障害の薬物療法では、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や三環系抗うつ薬という抗うつ薬を使います。強迫性障害の治療では、低用量の抗うつ薬では効果が不十分であることが多く、抗うつ薬を多めに使うのが特徴です。


SSRIなどの抗うつ薬は段階的に用量を増やします。この方法で、吐き気や下痢などの副作用を減らすことができます。また、中止する時も、段階的に用量を減らしてから中止します


抗うつ薬だけで効果が出ない場合は、アリピプラゾールやリスペリドンなどの非定型抗精神病薬を抗うつ薬と一緒に使うこともあります。こうすることで薬物療法の効果を高めることができます。


精神療法


強迫性障害の精神療法としては、暴露反応妨害法というものが一般的です。これは、嫌なことに直面しても我慢するような治療で、訓練に近いです。


たとえば、汚いと思うものをあえて触り、手を洗わないよう我慢するということをします。そうしているうちに、手を洗わなくても大丈夫だなと学ぶことができ、不合理な不安や行動に支配されることが減ります。ただ、暴露反応妨害法は負荷の強い治療法ですから、最初は挫折しないように、負荷を下げて簡単なものから始めるのが重要です。無理して挫折してしまうと逆効果になりかねないので注意してください。


また、確認は3回まで、手洗は3回までというように、繰り返し行為に上限を設けて、それ以上はやらないように我慢するというやり方も一般的です。


このように強迫性障害の精神療法は我慢を強いられることが多く、大変ですから、薬物療法である程度症状をやわらげてから精神療法を行うなどの方法も有効です。薬物療法と精神療法はどちらか一方を選ぶ必要がなく、同時に行っても問題ありません。

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