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てんかんの精神症状

更新日:2021年1月9日

このページについて:てんかんという病気は、精神症状や認知機能障害など精神科に関わる症状を出すことがあります。詳しく説明します。


てんかんとは、脳の神経細胞が急に興奮する発作(てんかん発作)を繰り返す病気です。てんかん発作には、痙攣したり、意識を失ったり、動悸がしたりと様々なタイプがあります。

てんかんの症状は、てんかん発作だけではありません。精神症状や記憶障害(健忘)といった認知機能障害もあるのです。

それでは、てんかんの精神症状から説明します。てんかんの精神症状はイライラや不安など色々ありますが、重篤なのは精神病症状といって、幻覚や妄想がてんかんに合併するケースです。あるシステマティックレビューによると、てんかん患者では、普通の人よりも7.8倍、精神病症状が出やすいそうです。てんかん患者さん全体のうち5.6%もの人に精神病症状が見られます。この割合は、てんかんの種類によっても違います。側頭葉てんかんという種類が最も精神病症状の割合が高く、全体の7%に精神病症状が見られるそうです。

精神病症状が出る時間にも特徴があります。てんかん発作の直後に幻覚・妄想などの精神病症状が出るケースは全体の2%でした。一方で、てんかん発作が収まった後(発作間欠期)に精神病症状が出るケースは全体の5.2%とのことで、こちらの方が多かったのです。このように、てんかん発作とは時間的に繋がっていないケースの方が多いというのは、少し意外かもしれません。

他にも、てんかんはうつ病も合併しやすいことが知られています。この場合も、やはり側頭葉てんかんに多いようです。そして、てんかん発作が収まった後、つまり、発作間欠期のうつ病が最も多いというので、やはりてんかん発作とは時間的には繋がっていないことが多いようです。

てんかんに精神疾患を合併した場合、てんかんと精神疾患、両方の治療が必要になります。精神疾患の治療は必ずしも薬に頼るものだけではありませんが、やはり向精神薬を使うこともあります。この場合、てんかんを悪化させる薬があることにも留意が必要です。例えば、多くの抗うつ薬にはてんかんを起きやすくする副作用があります。また、抗てんかん薬を一緒に使っている場合、薬同士の相互作用についても確認が必要です。例えば、カルバマゼピンという抗てんかん薬は、セルトラリンやミルタザピンなどの抗うつ薬の効果を弱めてしまいます。

てんかんは、精神症状だけでなく、認知機能障害も引き起こすことがあります。有名なのは一時的に生じる記憶障害、健忘という症状で、一過性てんかん性健忘などとも呼ばれます。これも側頭葉てんかんに多いです。一過性てんかん性健忘はてんかん発作の最中や直後に起こる場合もありますが、発作があってしばらくした後(発作間欠期)にも起きることがあります。

一過性てんかん性健忘には、一度覚えたことを数日すると忘れてしまう加速的長期健忘というものや、いわゆる記憶喪失のように過去の体験を忘れてしまう遠隔記憶障害などがあります。こうした症状はてんかんの一種であり、抗てんかん薬により治療可能です。

お年寄りに一過性てんかん性健忘が出現した場合、アルツハイマー型認知症などの認知症と間違えられることがあります。アルツハイマー型認知症には抗認知症薬などによる治療もありますが、基本的に回復することはありません。しかし、一過性てんかん性健忘は抗てんかん薬により回復する症状です。治療法も全然違うので、これらを間違えないようにしないといけません。

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